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2024.01.23

Kyo-workingトークセッション「次世代採用 スタートアップが取るべき新卒採用戦略」開催レポート

2023年度Kyo-working連続イベントの第2弾として、京都のビジネス面での最大の強みである「人材・採用」をテーマに、トークイベント「次世代採用 スタートアップが取るべき新卒採用戦略」を開催した。
本トークイベントは2023年11月22日19時から、東京駅八重洲口に新たにオープンした”POTLUCK Yaesu”(東京ミッドタウン八重洲5F)にて開催。最新の人材・採用環境における専門家として株式会社ワンキャリア Evangelist寺口浩大氏、実際に京都で人材を採用している第一線のビジネスパーソンとして株式会社ネットプロテクションズ 取締役 秋山瞬氏、株式会社ゲームスタジオ マネージャー 重命亨季氏がパネリストとして登壇。モデレーターは株式会社ユーザベース  NewsPicksメディアパートナーシップ責任者 久川桃子氏が務めた。

「次世代採用」の風景 – 最近の大学生の就職トレンドとは?

冒頭では次世代採用の背景として、株式会社ワンキャリア Evangelistの寺口氏より最近の採用動向、大学生の就職活動トレンドが語られた。 

学生の就職活動の開始時期は年々早くなっており、しかも長期間にわたって活動する傾向が強まっている。多くの学生が3年生の夏のインターン前の冬・春あたりから就活を始める。さらに早い学生が始めるのはその1年前だ。つまり学生の採用活動が3年間にわたることになり、企業側もこの傾向を踏まえ、これまでの採用方法を見直す必要がでてきている。また、仕事と私生活のバランスを重視する学生が増加しており、就活においても、エントリーのためのハードルをできるだけ下げて省力化してくれる企業を好む傾向がある。この背景として、コロナ禍によって大学生活を楽しむ機会が限られてしまった世代であるため、コロナ後の今、就職活動だけにあまり時間を割きたくないという心情があるようだ。
またインターンは、企業側が学生のスケジュールを考慮して夏季休暇時期に設定しているが、「自身の準備が間に合わなかった」「他のインターンや就活の日程と重なっていた」という理由で、学生の56%が夏のインターン参加を諦めているとのこと。そのため、学生は秋冬でもインターンの機会があれば参加したいという意向を強く持っている。 

企業は、学生の最新のニーズを捉えながら採用活動を計画することが求められそうだ。 

志望企業を選ぶ基準では、1位が「自分のなりたい職種である」、2位が「ワーク・ライフ・バランスが確保できる」、そして3位に続くのが「給料が高い」となっている。これまでは企業の安定性、企業の将来性、企業の社風や理念というように、「企業」目線で選ぶ基準が多かったが、近年は「自分」が主語。“自身のキャリアにとってその企業はどうか”という観点で志望企業を選定する傾向があるという。さらに就職活動中から、予め“その先の転職を意識している”学生が約4割を超えている。転職がしたいというより、「転職できない人材になりたくない」という意識が強いようだ。 

次に、関東と関西の地域別に志望企業のトレンドを見ていく。 

東京大学と京都大学の志望する企業の嗜好性に違いはあまり見られない。この二つの大学においては何よりも口コミが重要。“先輩のおすすめ”や、“周囲の友人・知人からの評判”に非常に大きな信頼を置いている。“実際に職場を体験した人がどう言っているか”が、学生の意思決定に最も大きな影響力を持っているようだ。 

一方で、関東の大学(明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学)と、関西の大学、(同志社大学・立命館大学・関西大学・関西学院大学)の学生の傾向を比べてみると、関東ではIT、コンサルのようなBtoBの業種が多いのに比べて、関西ではTVCMを出稿しているBtoCの業種が顕著に多いことがわかった。 

久川氏:関西は志望企業の選定にTVCMの影響を受ける一方、関東はあまり影響がないという点がありました。関西ではTVCMを打つようなBtoCの会社には親しみはあるものの、BtoBの話があまり行き渡っていないということなんですか? 

寺口氏:はい、BtoB企業は身近じゃないですね。関西では学生の周囲にBtoB企業で働く身近な人が少ないのも一因と思います。 

久川氏:周りもいないから、自分も行きたいとも思えない。遠い存在になっているってことなんですかね。

寺口氏:はい。逆に言うともったいないし、ポテンシャルは非常にあると思っています。実際に職場を経験した人からのよい評判が広がりさえすれば、企業としても、ぐっと採用活動がしやすくなる。チャンスは広がっています。 

企業側が採用活動を計画するにあたって、学生の東西のニーズの差からチャンスを見極めることができそうだ。

採用視点での京都市のポテンシャル – なぜ京都に拠点を?

株式会社ネットプロテクションズでは、そもそも採用する人材のうち3割が関西出身。社内の関西出身のメンバーが、「京都拠点を立ち上げたい」と声を挙げた際、同社の秋山氏は前職で関西拠点設立の経験があったため、経営陣としてこの試みを承認し、支援した。

東京が本社の会社として、関西拠点に大阪ではなく京都を選んだ背景として、京都ならではの特性を理由に挙げた。営業視点だけで言えば、大阪に拠点を置いても良かったが、採用の点ではやはり学生の多い京都に軍配が上がる。そして、立ち上げた拠点のメンバーがエンジニア中心だったため、彼らとしては京都のクリエイティブな環境の方が働きやすいという事情があった。営業・採用・開発の三つの観点で見れば、「京都しかないよね」という意志決定プロセスがあったそうだ。 

久川氏:京都は“学生のまち”というイメージはありましたが、人口の約1割にまでのぼるんですね。多彩な人材の宝庫ということで、理工学系の学生が1.6万人。これは結構大きいですよね。

秋山氏:京都は本当に学生が多いなという印象があります。弊社でラボを立ち上げる際にも、開発メンバーとして学生インターンを多数採用しました。これは“京都にオフィスを置いたからこそ得られた結果であったな”という実感があります。まさに人口の1割が学生というところが効いてますね。

重命氏:私はちょうど子どもが生まれたタイミングで自身のキャリアを考え直す機会がありました。妻も関西出身で、そのまま東京で子育てをすることに懸念もあったので、退職も視野に入れて考えていたところ、会社からの支持があって、京都で事業所を立ち上げようという話になっていきました。
弊社の事業はゲーム制作なので人材としても、特殊な職能を持っている方を探しています。そこで、京都の“学生の多さ”と“クリエイター気質の人材が豊富”な点は、新卒採用における大きなメリットになってきます。そもそも地域の特徴として、物を作ることが好きな人、クリエイティブな人材が多い、ということが京都にはあると思います。芸術系の大学も多いですしね。

寺口氏: これはデータがあるわけではなくあくまで印象としてなんですが、確かに学生は多いし、一方で、高齢者世代もまちでよく見かけるんですが、僕らくらいのちょうどミドルの年齢層の方をあまりまちで見かけないな、と感じていたりします。

重命氏:はい、実は我々が京都拠点を立ち上げたときには中途採用をやろうと思っていたんです。中核になっていくメンバーを募集しようと考えていたので。ただ実際、あまりうまくいきませんでした。寺口さんがおっしゃったように中盤世代の方からあまり応募が来なかったです。そこで新卒採用に切り替えたところ、どんどん人が集まってきて、拠点として伸びてきたという経緯があります。私としても京都はどちらかと言うと新卒採用向きなのかなと感じていますね。

秋山氏:私たちの会社自体が非常に新卒カルチャーの強い会社です。全体で300人強のメンバーがいるのですが、7割、8割が新卒で入社しています。平均年齢よりも28、9歳と非常に若い。しかも、京都拠点の立ち上げメンバーは新卒で入社2年目の社員3名という圧倒的に若いチームで立ち上げています。今では、「京都にオフィスがあるなら」と関西出身のメンバーがUターン的に京都での勤務を希望するという流れも増えています。チームも若いので、「自分たちでオフィスを作っていくんだ」と言う気概を持ってやっていますね。

今取るべき具体的な採用戦略 – 実際京都ではどう仕掛けたらよいのか?

寺口氏は、学生を取り巻くメディア環境や学生の情報摂取行動の変遷に着目する。
ターゲットとなる学生は、あまり熱心にテレビを視聴しない。求人広告も見てくれない。自分から積極的に外の世界を検索して情報を取りに行くこともあまりしない。彼らにとって重要なのは“口コミ”と“Instagram(等SNS)のアルゴリズム”。自身のInstagramの輪の中に入ってくる情報を、自分に最適化された必要な情報だと判断し、有益だと感じればさらに周囲にシェアをする。友人知人から共有されたものは信頼のおける情報として伝播していく。

企業側としては、学生に向けて適切に情報を伝達していると思っていても、学生側はその情報を“不要なもの、自分には関係のないもの”として、情報を受け取らないという判断をしていることも多々あると言う。例えば、YouTubeでもInstagramでも、興味のない広告が出てきたら、“次回から表示しない”という選択を日常的にしている。
その常識の中で、学生たちに情報を確実に届けきるのは非常に難しいこと。だからこそ、“学生へ一方的に情報を伝える”のではなく、インターンなどの枠組みを活用して、学生と一緒になってメディアを選定したり、コピーワークを検討するなど、いかに“学生に仲良くなってもらえるか”が重要となる。
例えば、インターン後に一旦別の企業に就職した学生が、転職でまた戻ってきてくれることが多くみられる。その鍵になるのは、“長期インターンでどれだけ仲良くなれるか”、そして、“他社に就職することになっても笑顔で送り出すことができるか”だという。採用・インターン・ビジネスのどの領域においても、“学生に”ではなく“学生と”が重要となりそうだ。

さらに、パネリストたちは京都のまちの狭さにも着目する。京都市はコンパクトシティとも呼ばれ、東京など他の大都市に比べて都市機能(繁華街・ビジネス街・大学など)が集まるエリア面積が限られている。従ってどのような集団が、どこに集まっているかがお互い把握できているまちである。つまり、どの大学の学生が、どの時期に、どこに集まっているかも容易に把握できるのだ。このため、企業からすると、京都市を舞台としたオフラインでの採用マーケティングはとても仕掛けやすい。“京大生を狙うのであれば、出町柳東側のこのお店”、“新歓の時期に学生が集まる居酒屋は三条のこの店”など、ピンポイントで採用のためのエリアマーケティングを仕掛けて効果を出すことも可能である、と寺口氏は語る。

― ここからは参加者からの質問を起点とした議論が続いた。

Q. 採用活動や学生の動きでコロナの影響があるのでしょうか。

寺口氏: 当然あります。ただ、説明会や面接で、リモートの方がいいのか、リアルの方がいいのか、みたいな議論は、調査結果も出ておりシチュエーションによって使い分けるのが良い、良いとこ取りするのが望ましいということで、一旦終わっている、という認識です。リアルで会える世の中になった今、“いかにリアルの場で学生と接触機会を持って、いい体験を作れるか”。そのためには、一歩進んで、リアルで集まる人々の、“その中心にいる人は誰か”、“関心ごとは何か”、を突き止めて、そのコミュニティと“どのように良い体験を共有できるか”という議論に移行してきています。その目星をつけて、先行者利益を取れるかどうか。

久川氏:いかにそのリアルの成功体験を先に取るか、というのはおもしろい視点ですよね。

寺口氏:コロナ禍の初期では、オンライン環境にいち早く適応して仕掛けていくことがとても重要でしたよね。今はまさにその逆ですね。

Q. 重命さんも言及されていたように、京都にはクリエイティブな気質があると思います。芸術系大学も多いと思います。実際の採用において、デザイン、アート人材が多いという点は、企業にとって利点として機能していますか?

重命氏:うちは、間違いなくあると思います。

久川氏:ありがとうございます。では逆に秋山さんの株式会社ネットプロテクションズのようなIT企業でも、こうした気質ってメリットになるんですか?

秋山氏: はい。私たちの会社は「つぎのアタリマエをつくる」をコーポレートミッションとして掲げ、「世にないものを生み出す」ということを目指しています。だから、物事の本質から考えるということを非常に大事にしています。よくうちの会社では、“そもそもから考えよう”ということで、「そもる」という言葉が生まれているくらいです。

美大などで、デザインやアートなど創造的な考え方を学んだ人々はやはり、こうした新しい視点や切り口が必要となる仕事に向いていると思います。これは個人的に思っていることですが、クリエイターもですが、やはり京都にはイノベーターが多いですよね。

久川氏:確かにノーベル賞受賞者も多いですし。学生時代を京都で過ごした寺口さんは何か感じるところはありますか。

寺口氏:京都では「意味があるか分からんけど、なんか作りたい」と、企画したり、イベントしたり、“何か作る”というのが当たり前でしたし、それは脈々と受け継がれている。
また、今クリエイターっていう言葉の解釈が結構広がってきているな、と思っています。デザイナーはもちろん、エンジニアもクリエイターだし。ビズデブ(Business Development)だってクリエイター。僕自身もPRが専門領域ですが、それは空気を作るお仕事なので、ムードのクリエイターであると言えると思います。そもそもスタートアップには、こうした作ることが好きな人たちが非常に相性が良いと思います。だからこそ人材採用においては、京都に重点を置いた方が絶対にいいと思いますね。

Q. 京都出身の方の共通の魅力はどんなところですか。

重命氏:“ぶぶ漬け”の話が有名だったりしますが(笑)。先ほどの話でもありましたが、「面白いことをやりたい」という人が多い気がします。サービス精神が豊富で、“こういうことをやったら喜んでもらえるだろう”と。あと京都出身の方は地元愛が強い。私も京都が好きで戻ってきましたし、「京都で働きたいので、仕事を探している」という方は多い。

寺口氏:“仲間に入るのが大変説”はあるものの、一旦仲間に入るとその後の資産がすごい。

重命氏:あと、ピュアな人が多いですね。京都のゲーム業界の皆さんとは仲良くて、飲み友達的な横のつながりができていて、一旦入ってしまうと丁度よい距離感で温かいところがあります。

寺口氏:京都には大学入学で毎年多くの学生が転入してくるので、クローズドなアイデンティティーのところにオープンマインドな学生さんが入ってきて、上手く融合しているのかな、と思うことがあります。

今回のトークでは最新の学生の就職活動のトレンドから、特に採用戦略において京都に拠点を設ける意義など具体的で有益な情報が数多く交わされた。
海外からの人材獲得も進めている秋山氏からは、開発拠点が京都にあるということ自体が魅力となり、京都で働きたいという理由で海外から応募が来ることもある、と明かす。「アフターコロナの世界でグローバルとますますつながっていくためにも、京都の魅力はますます重要になってくるのではないか」と締め括った。

【登壇者プロフィール】

寺口 浩大氏 (てらぐち こうだい)
株式会社ワンキャリア Evangelist

兵庫県生まれ。京都大学卒業。リーマンショック直後、三井住友銀行に入行。企業再生、M&A関連の業務に従事したのち、デロイトで人材育成支援に携わる。現在、株式会社ワンキャリアでEvangelistとして活動。転職サイトONE CAREER PLUSで「キャリアの地図」をつくりながら、地元関西をキャリアと採用の側面から盛り上げることに挑戦中。

秋山 瞬氏 (あきやま しゅん)
株式会社ネットプロテクションズ 取締役

慶應義塾大学卒業後、設立2年目の人材系スタートアップ企業に新卒1期生として入社。 新規事業責任者や関西支社長を経験した後、2009年に株式会社ネットプロテクションズに参画。 2013年より主事業である後払い決済「NP後払い」のセールスマネージャーに就任し、 大手アパレル企業や大手通販モールの決済導入をはじめ、多くのEC事業者様の売上アップに貢献。 2017年に執行役員に就任し、企業アライアンスを行うビジネスディベロップメントグループを立上げ、 2018年にはマネージャー職を廃止した人事評価制度『Natura』をリリース。 2021年末に東証一部(現プライム)市場に上場し、2023年に取締役に就任。 事業・組織双方でミッションである「つぎのアタリマエ」づくりを目指す。

重命 亨季氏 (しげなが こうき)
株式会社ゲームスタジオ 第4プロデュース部
マネージャー

1984年生まれ。京都府宇治市出身。2007年3月立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部卒業。2007年4月に株式会社アイエムジェイに入社し、グループ会社の株式会社モバイル&ゲームスタジオ(現株式会社ゲームスタジオ)に出向、のちに転籍。携帯電話やスマートフォン、家庭用コンソール向けのゲーム開発など多数のゲームを開発。2014年1月に京都に戻り、京都オフィスを設立。マネージャーとして営業活動から開発管理、部下育成までフル回転稼働中。

久川 桃子氏 (きゅうかわ ももこ)
株式会社ユーザベース UZABASE / NewsPicksメディアパートナーシップ責任者

一橋大学商学部卒業後、外資系金融機関を経て2002年、日経BP社に入社。日経ビジネス記者として医薬品、運輸、ホテルなどを担当。2度の出産、育休の後、ママ向け雑誌「ecomom」の編集長を務める。2015年3月、 NewsPicksに参加。広告事業を手掛けるBrand Designチームの立ち上げからチーフプロデューサーを務める。2022年1月、Uzabase/NewsPicksメディアパートナシップチームを新設し責任者を務める。UB Ventures エディトリアルパートナーを兼務。

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