- REPORT
2026.03.26
京都市企業立地セミナー「文化と経営のトップリーダーが語る-京都という、計り知れない可能性-」開催レポート
令和8年1月23日(金)、ボストンコンサルティンググループ 日本共同代表の秋池 玲子様、作曲家・文化庁長官の都倉 俊一様をお招きし、松井 孝治京都市長とともに、ビジネス拠点としての京都の魅力と、海外企業等の誘致へ向けた展望を語り合うセミナーを東京ミッドタウン八重洲にて開催しました。当日は、在日大使館、在日外国商工会議所、外資系金融機関、JETRO、オフィス仲介、VC等、100名を超える方々にご参加いただきました。

登壇者
松井孝治(京都市長)
秋池玲子氏(ボストンコンサルティンググループ 日本共同代表)
都倉俊一氏(作曲家・文化庁長官)
司会進行 中村優子氏(フリーアナウンサー)
ビジネス視点での京都の魅力
中村
早速、京都の魅力についてゲストの皆様にお伺いしましょう。秋池さんがいらっしゃるボストンコンサルティンググループは2020年に京都進出を、文化庁は2023年に京都移転をされましたが、なぜ京都を選ばれたのでしょうか。
秋池
支店を作る際は、そこに仕事のポテンシャルがあるかどうかが最重要です。その観点で言うと、大阪と京都をひとまとめにして関西支店のような形にした方が東京に匹敵するような支店になるかもしれません。しかし、あえて京都支店を作ったのは、京都に身を置いて、そこで生まれる技術や人材と一緒に仕事をすること、自然や文化、ものづくりに触れることで生まれるクリエイティビティを得ることが大事だと思ったからです。

松井
京都は京都であることが魅力です。東京・大阪と同じようなことをすると京都の魅力はなくなってしまう。コンパクトなまちの規模感、そしてスケールを追わず、他の都市と同じことをするのを良しとしないことこそが京都です。
外から見ると寺社仏閣に惹かれる方が多いですが、生まれ育った人間からすると、個人店や専門店、路地、家の佇まい、お店でのお客さん同士の距離感こそが魅力です。老舗であればあるほど、どこかへ行くと共通の友人がいて話がはずみます。この空気感、コミュニティの熟成具合が京都ですね。
京都はよく閉鎖的だと言われますが、決してそうではありません。空気感を尊重し、リスペクトする気持ちがあれば受け入れてくれます。
都倉
文化庁の長官をしておりますが、2025年は京都と東京を68回往復しました。それだけ往復すると、京都と東京の違いもはっきりと感じます。箱根の山を越えると、時間の流れが違うように思いますし、私の頭の中のスイッチも入れ替わりますね。それは私だけでなく、職員でも同じです。京都に住んで京都で過ごしていると、東京にいるよりも季節がゆっくりと過ぎていくように感じるという職員が多いです。

中村
ビジネスの観点で、京都市はどんな企業に選ばれたいとお考えですか。
松井
多様な方や企業に来ていただきたいです。特に、伝統産業と海外を繋いでおられる方は、ぜひ京都に拠点を置いてもらいたいですね。海外マーケットに注目している事業者は多いです。
また、都倉さんのお話にもありましたが、自分と向き合う場所として京都のまちを使っていただきたい。東京でオフになっているスイッチを京都ではオンにし、反対に東京でオンになっている煩わしいスイッチはオフにしていただきたい。

京都がより魅力的になるために必要なこと
中村
京都がより前に進むために、解決してほしい課題はありますか。
秋池
よく言われる話としてはスペースが少ないという問題だと思います。古い時代にまちの骨格ができたところは、現代の生活にフィットしづらい側面があるかもしれません。ただ京都は地下鉄がありますし、コンパクトなまちなので郊外に出ればスペースもあります。
スペースの問題にとらわれるよりも、海外企業と提携をして仕事をしようとする日本企業が、法務や財務面も含めてうまくアライアンスできる素地をつくることが大事だと思います。
京都の町には資本主義の形以外の価値観もあり、毎年売上を伸ばして利益を増やして市場を大きくしようという考えだけでは動いていないと感じています。突きつめて1つの仕事をしている個人商店がたくさんあることこそが、京都の魅力で面白さだと思います。難しさもあると思いますが、今後もぜひ残していってほしいです。
松井
本質的なお話をいただきました。
京都はノーベル賞の受賞者は多いけれど、それをつなぐ経営人材が欠けています。また、伝統文化や伝統工芸をグローバルなマーケットとつなぐ人も足りていません。逆に言えば、そこにビジネスチャンスがあるんじゃないかなと思いますね。
また、現在の資本主義とは相容れないかもしれませんが、京都ではグローバルニッチに向き合っている企業が多く生き残っています。そういった何かを突きつめている人や企業が多く集まる京都の良いところは、互いに理解しリスペクトしている点にあります。
効率性を追求することはビジネス上必要かもしれませんが、それが過ぎると京都が京都でなくなってしまうので、バランスが非常に難しいですね。
都倉
京都人気質の集大成のひとつに、「京都迎賓館」があります。職人の技の結晶とも言える素晴らしい建物で、職人の皆さんはその建設に携わらないと末代までの恥だという意識を持ち、技を持ち合って関わっていました。そこにプライドと喜びを感じているのです。そういう姿勢からニッチな産業が生まれ、継続しているのだと思いますね。他にこのようなまちはありません。京都には伝統があるからこそなのだと思います。
松井
その通りなのですが、私はその職人気質に危機感を覚えています。ポテンシャルはあるのにマネタイズが上手くない。それ以前に、若い方々は伝統産業のことを知りません。だから「京都学藝衆構想」の中で様々な体験機会を創出しようとしています。ぜひ京都のクラフトマンシップを次の時代に、世界につなぐために、京都以外の方にもお力を借りたいです。

暮らすまちとしての京都の魅力
中村
生活面での京都の魅力もお伺いしたいです。
秋池
安全に歩いて楽しめるまちだということは、世界的に見ても大きな魅力です。食や文化など毎日新しいものが見つかるのは、歴史が多層的に積み上がっているからこそ。同じ場所でも、平安、室町、江戸時代の物事がここで起こっていると実感できるのは面白いです。
また、ビジネス面の魅力にもなりますが、既にクラスターができていてこれからサプライチェーンを整えていこうとしている領域や、単独で生まれたものが発展していこうとする領域など、ビジネスフェーズの色々な断面が見られるのも大きな魅力です。
一方で、今まであって当たり前と思っていたものが消えてしまう時期に来ていますので、市長がおっしゃる「京都学藝衆構想」を通して残していかないといけないと思います。
都倉
生活して感じる京都の魅力は、やはり人です。奥ゆかしさや優しさがあるなと感じました。京都人とご飯を食べに行って、知り合いに遭遇する姿を見ると羨ましさを感じます。洛中洛外の発想もいまだにありますし、それも含めて魅力です。
松井
京都の中心は一つではありません。例えば花街は五つありますし、建築物にしても様々な時代に建てられたものがあり、色々なものが多層的に存在している。それぞれ違うけどお互いを認め合っているというのが京都です。
外から来る方は最初、孤独を感じるかもしれませんが、何度か会えば仲間になれるのも京都です。京都人だけだったらコミュニティは持たないし、都とは呼びません。色々な地域の方が京都に来られて交流し、様々なものを許容するから都なのです。ただし、その多様性を維持するためには、マネタイズが必要です。そのため、例えば、まちを残すことに貢献してもらおうと考え、宿泊税を導入しました。

中村
最後に一言ずつお願いします。
都倉
京都は宣伝が得意ではありませんが、外から来た人に発見される文化があります。精神的な部分も含めて見つけてもらえれば、京都の素晴らしさをもっと理解してもらえると思います。
秋池
一つ扉が開くと、次々に面白いものが見えてくるまちです。ぜひ何度も尋ねていただき、進出を考えている企業も来ていただけたら嬉しいです。
松井
本日は街なかの話をしましたが、車で30分も走れば森が広がる京北エリアもありますし、南には日本酒の有数の産地である伏見エリアもあります。琵琶湖に近接する山科エリアは、交通の要所として今後も発展するでしょう。京都の中にも様々な京都がありますので、その魅力を開拓していただき、京都の奥行きを感じていただきたいです。
課題はありますが、ぜひ皆様の力をお借りしてチャンスに変えていきたいと思います。是非その当事者として関わっていただきたいです。
