- REPORT
2026.05.12
スタートアップの“新たな潮流を創る” 「FROM KYOTO(フロムキョウト)」イベントDAY3レポート
スタートアップの新たな潮流をつくることを目的に、京都が誇る先駆的なテーマを送るカンファレンス&ネットワーキングイベント「FROM KYOTO」をCIC TOKYOにて2025年12月計6日間開催しました。
DAY3「京都企業のCVC・新規事業開発担当が語る「地域のスタートアップ・エコシステム」への期待」の様子をお届けします。
登壇者
大崎 学氏(宝ホールディングス株式会社 事業管理部 新規事業開発担当 課長)
長坂 優志 氏(京セラ株式会社 関連会社統括本部企業開発部 新規事業投資部 新規事業投資1課責任者)
橋爪 宣弥 氏(株式会社島津製作所 基盤技術研究所 みらい戦略推進室CVCグループ グループ長)
福岡 亮 氏(京都キャピタルパートナーズ株式会社 ジェネラルパートナー)
髙橋 紀代(京都市産業観光局スタートアップ・産学連携推進室 主任)
進行
金山裕喜氏(一般社団法人京都知恵産業創造の森スタートアップ推進部 次長)
※所属・肩書は当時のものです

京都のエコシステム、その特性とグローバルへの展開
大学、ものづくり企業、金融、公的機関等がコンパクトに集まる京都では、古くからそれぞれの主体が密に連携し、顔の見える関係を形成しています。
近年京都では、大学発のディープテック・スタートアップが数多く誕生していますが、京都企業のCVCや新規事業開発担当は、「京都のスタートアップ・エコシステム」をどのようにとらえているのでしょうか。エコシステムのさらなる充実やグローバル化に向け、どのような課題があるのでしょうか。
京都企業のCVC・新規事業開発担当、産業支援機関、行政の事業担当者が、今後の展望や期待について議論します。
京都独自のエコシステム
金山 最初に、京都のスタートアップ・エコシステムの現状をどう捉えているか、お聞かせください。
福岡 やはり大きいのは京都大学の存在ですね。京大発のスタートアップが年々増えています。
橋爪 京大発のスタートアップは、京都大学イノベーションキャピタル株式会社の設立を機に大きく増加しました。今は、絶対数では東京大学に次ぐ位置ではありますが、その増加スピードにはかなりの勢いがありますね。

長坂 京都には、大学、ディープテック系スタートアップ、行政、そしてものづくりに根差した事業会社が限られたエリアに集積しています。京都市や京都府など、公的機関の支援も手厚い。こうした人材や施設が近接しているからこそ、私たちのように新しくCVC活動を始めた立場でも、そのエコシステムの中で横のつながりを短期間で築くことができる。この「コンパクト」さが、京都ならではの強みだと思います。
大崎 私はこの4月から新規事業開発の領域に携わり始めたばかりですが、京都のエコシステムは、確かに入りやすい環境だと感じています。VCや大企業同士の横のつながりも強く、自然と情報が集まってくる。スタートアップにとっても、支援する側にとっても、開かれたエコシステムになりつつあるのではないでしょうか。
髙橋 京都のスタートアップはディープテックが多く、市場、研究、資金を長期的な視点で循環させていく必要があります。その中で、金融機関や事業会社、CVCが連携しながら支援できる体制が整ってきたことは大きな進歩です。一方、海外から見たときに、日本の他の都市と同様、「京都がスタートアップ都市として認識されているか」というと、現状ではまだ十分とはいえません。他の都市とも連携しながら、日本全体としてエコシステムのプレゼンスを高めていきたいと考えています。
CVC・新規事業開発部門が注目するスタートアップ
金山 今回のイベントでは、ここCIC TOKYOから、京都のスタートアップをグローバルに発信していくことを一つの目的としています。あらためて、皆さまが注目されている京都のスタートアップや分野についてお聞かせください。
福岡 京都大学といえば、山中伸弥先生のiPS細胞が広く知られていますが、バイオ・ライフサイエンス全般が非常に強く、スタートアップも次々と生まれています。資金調達についても比較的順調に進んでいる企業が多くあり、着実に次のステージへと進んでいる印象です。10年、20年先を見据えたとき、バイオ・ライフサイエンス分野は、京都の産業を支える大きな柱になると考えています。
橋爪 当社は現在、京都のスタートアップ3社に出資していますが、内2社はいずれも京都大学発スタートアップです。京都大学は、iPS細胞に代表される創薬分野をはじめ、グリーン領域やマテリアル分野において強い研究基盤を持っています。京都大学には事業化の可能性を秘めた魅力的な研究シーズが数多く存在していると感じています。
長坂 私たちが出資している企業の一つが、京都フュージョニアリング株式会社です。核融合のエンジニアリングに取り組む京都大学発スタートアップで、大規模な資金調達を実現し、グローバルでも高い認知を得ています。当社では、出資に加え、セラミック材料を、同社の核融合で活用する共同開発も進めています。ここまで成長した京都発スタートアップはなかなか例がありません。こうした成功事例が増えていくことを期待しています。

大崎 当社のこれまでの祖業を踏まえると、バイオテクノロジーをコア・コンピテンシーとして新規事業の開発を進めていく方向にあります。私も皆さまと同様、ライフサイエンスやアグリバイオ分野のスタートアップには日ごろから注目しています。
髙橋 私が担当しているスタートアップのグローバル支援プログラムでも、対象の5社中4社がライフサイエンス系のスタートアップです。成果が出るまでに一定の時間を要する分野ではありますが、だからこそ行政としても重点的に支援していく必要があると考えています。腰を据えて取り組み、最終的に「勝ち切る」ところまで支援する。その姿勢が重要です。ライフサイエンス分野は、いまや京都のスタートアップを語る上で欠かせない存在になりつつあると感じています。
エコシステムのアイデンティティ
金山 よく「京都のエコシステムは面白い」「自然とスタートアップが集まってくる」といわれますが、その背景にある京都ならではの要因や価値観をどう考えますか。
福岡 やはり大きいのは大学の集積だと思います。比較的コンパクトなエリアの中に、大学と世界的な企業が集まっている地域はなかなか珍しいのではないでしょうか。物理的な距離が近いことも重要で、イベントを開催しても参加してもらいやすく、交流も生まれやすい。そうした地域特性が、京都のエコシステムを特徴づけていると感じます。

橋爪 福岡さんのお話とも重なりますが、大学と事業会社の両方が多く立地する点は大きいですね。本社機能だけでなく研究開発部門も立地しており、製品開発や技術ディスカッションができる人材が京都にはいる。大学と企業が早い段階から基礎研究を育てていく雰囲気も、京都らしさだと思います。
長坂 今のお話に加えて、京都を語る上で欠かせないのが、世界有数の観光都市であるという側面です。観光都市としての京都も、単なる消費ではなく、文化を尊重し、磨き続けてきた姿勢の延長線上にあります。その価値観はものづくり企業や事業会社にも通じており、産業と観光が両輪となって京都のアイデンティティを形づくっているように感じます。
長期的な視点で基礎研究を積み重ね、技術に誇りを持って育てていく。その気質は、当社をはじめとする多くの京都企業に共通する特徴であり、京都という地域の強さの源泉でもあると考えています。
大崎 皆さんのお話と重なりますが、京都の強みは、やはり長期的な視点に立って物事を捉えていける点にあると思っています。歴史のある街だからこそ、短期的な成果を追うのではなく、時間をかけて育てていくという発想が自然と根づいている。加えて、京都にはものづくりの気質が強く、それがディープテック・スタートアップとの高い親和性につながっている。
一定の時間軸を前提に、技術や事業を、腰を据えて育てていこうとするマインドが、京都企業の土壌として確かに存在しているのではないでしょうか。

髙橋 2025年7月、京都で開催された IVSでは、Notion のCEOである Ivan Zhao 氏に登壇いただきました。同氏の発言で印象的だったのが、「Notionは京都で構想され、最初のコードも京都で書かれた」というエピソードです。禅の思想に触れながら、「立ち止まって考える」「物事をできるだけシンプルに捉える」といった京都の空気感がNotionのサービスの原点とのこと。
拙速に答えを出すのではなく、深く考えることを良しとするカルチャーや気質こそが、京都のエコシステムを形づくる重要な要素の一つだと思います。
活性化とグローバル化に向けて
金山 京都が今後さらに活性化し、グローバル化していくためには何が必要だと思われますか。
福岡 京都は、かつて都が置かれていたまちとして、老舗や伝統産業が今も数多く受け継がれています。こうした伝統産業を次世代につなぎ、さらに発展させていかなければ、京都というブランド自体の競争力も徐々に弱まってしまう。そこで私が考えているのが、スタートアップと京都の伝統産業を掛け合わせ、グローバル展開や次世代への継承に繋げていくことです。
西陣織の老舗細尾の12代目 細尾真孝さんは、海外のハイブランドに積極的にアプローチし、内装材やインテリア素材として採用される事例を生み出しています。こうした成功例を広げていくためにも、伝統産業とスタートアップが連携し、新しい挑戦を重ねていくことが不可欠だと考えています。
橋爪 京都をさらに活性化させる上で足りないのが、スタートアップ向けの「オフィス兼ラボ」です。オフィス自体は多いものの、事務作業に特化した場所が中心で、実験や試作ができる環境は限られています。その結果、ラボを求めて京都以外に拠点を移さざるを得ないスタートアップも出てきています。土地が限られていることなど京都ならではの事情はありますが、この点はエコシステムとしての大きな課題だと感じています。
長坂 人材の流動性の観点もエコシステムとして成長余地があると感じています。マーケティングやファイナンスといったプロフェッショナル人材や、スタートアップでExitを経験したCXO人材が、次は京都で起業する、あるいはスタートアップに関わる。そうした循環を生み出すことが重要だと思います。
大崎 私もCXO人材の発掘や循環は重要だと感じています。加えて、事業化に繋げていくために、京都の強みであるディープテックなど、難しい技術を分かりやすく翻訳し、関心のある方に届けていくこともエコシステムの活性化に繋がるのではないかと思います。
京都での挑戦を後押し
金山 最後に、京都に関わる企業・支援者の立場からメッセージをお願いします。

福岡 伝統産業に限らず、京都の企業とコラボレーションしたい、面白いビジネスアイデアがある、という方がいれば、ぜひお話を伺いたいと思っています。京都で新しいビジネスの展開を考えている方がいればお気軽に声をかけてください。
橋爪 京都は東西南北が分かりやすく、少し足を延ばせば自然も豊かで非常に住みやすいまちです。自治体や企業と繋がりたいと思えば、誰かしらの縁で必ずどこかと繋がれる、人との距離が近いまちでもあります。非常に密なエコシステムができているという観点でも、スタートアップの育成には向いている土地だと思います。
長坂 京都のスタートアップ・エコシステムは非常に魅力的で、高いポテンシャルを持っています。多様な方と一緒に、「FROM京都」を発信していきたいと思います。
大崎 京都には伝統を重んじる文化と同時に、革新を志向する姿勢の両方があり、新しい挑戦を後押ししてくれます。この京都という場所から、皆さまとともに活動できればと思っています。
髙橋 京都は住環境や子育て環境が非常に整ったまちです。京都市としても、京都にオフィスを設けたいと考えている方に対し、検討段階から一貫して支援する体制を整えています。ぜひ、京都での拠点設置や事業展開をご検討いただければ幸いです。