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2025.03.31
京都イノベーションオフィス/Hive Kyoto~京都発スタートアップを支援するVCとM&A仲介の共同拠点~
M&Aの仲介・コンサルティングサービスを行う株式会社ストライクと、IT分野のスタートアップ企業へ投資を行う独立系VCのEast Ventures。2024 年6月、両社は京都市・四条烏丸に共同拠点「京都イノベーションオフィス/Hive Kyoto」を開設しました。京都進出と共同オフィス開設の理由、狙いなどを、株式会社ストライク代表取締役社長の荒井邦彦氏とEast Venturesパートナーの金子剛士氏に伺いました。(取材日:2025年3月5日)

プロフィール
荒井 邦彦(あらい くにひこ) 株式会社ストライク 代表取締役社長<写真左>
1970年、千葉県生まれ。一橋大学商学部卒。1993年、太田昭和監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入社。財務デューディリジェンス、株式公開の支援などの業務を経験し、1997年に株式会社ストライクを設立。2016年6月に株式を東証マザーズに上場し、翌年6月に東証一部へ市場変更、22年4月に東証プライムへ移行。一般社団法人M&A支援機関協会の代表理事。
金子 剛士(かねこ たけし) East Ventures パートナー<写真右>
1991年生まれ。学生時代より独立系VCでのインターンを経験し、2014年新卒で株式会社ジャフコに入社。その後、East Venturesに転籍し、パートナーを務める。East Venturesでは、業種・業態問わず若手起業家の創業したスタートアップを中心に年間数十社の新規投資を実行。担当投資先は国内外で100社以上。一部の投資先では社外取締役や監査役を引き受けており、株式会社ジラフ社外取締役、株式会社Popshoot監査役等を兼務。
VCとM&A仲介会社が意気投合
-はじめに、それぞれの会社の概要と事業内容について教えてください。
金子さん
East Venturesは、日本とインドネシアを中心としたASEAN諸国のシード期の企業に投資・支援しています。これまで累計900を超えるスタートアップを支援しており、日本での主な出資先には、メルカリ、ビズリーチ、グノシーなどが挙げられます。
荒井さん
ストライクは、年間300件ほどのM&A仲介・コンサルティングサービスを行っています。後継者不在に悩む中小企業の事業承継型M&Aを中心に、スタートアップが事業会社と結びつくことで大きな成長を目指すイノベーション型M&Aにも力を入れています。
-お二人はどのようにして出会われたのですか?
金子さん
共通の知人を通じて知り合い、East Venturesのファンドへの出資をいただいたのがきっかけです。以後、当社の投資先の若い起業家たちに、先輩として経営のアドバイスをしていただくなどお世話になっています。
京都のポテンシャルに着目
―京都に拠点を置かれた理由をお話しください。
荒井さん
有力な大学が多く、ノーベル賞受賞者も多数輩出していることから、京都のポテンシャルの高さにはかねてより目を付けていました。科学技術的なバックグラウンドがしっかりあって、若く優秀な人材もたくさんいるにもかかわらず、突出したスタートアップは生まれていません。誰かが火をつけていけば、うまくいくんじゃないかと思っていたのです。そんな見解を金子さんに披露したところ、意気投合したのが始まりです。
金子さん
East Venturesの投資先には学生起業家も多く、京大、同志社大、立命館大などでも成功の事例が多くあります。京都に拠点を設け、もっと力を入れたいと考えていたのですが、良い物件が見つからなかったこともあり、実行できずにいました。同じ着眼点を持つ荒井さんから「一緒にやりましょう」とお申し出をいただき、とても心強かったです。
―M&A仲介会社とVC との共同拠点は全国でも珍しいようですが、連携することのメリットは、どんなところですか?
荒井さん
ストライクはスタートアップの出口戦略のひとつとして、M&Aの普及を目指しています。今回の共同拠点を通じて、起業家たちが早いうちからM&Aという選択肢を意識する環境づくりができるのではないかと期待しています。 多くの起業家は新規上場を目標としますが、そう簡単ではありません。一度M&Aを経て、次に起業したときに新規上場を狙うほうが良い場合もあります。
金子さん
日本のスタートアップのM&Aはアメリカに比べると圧倒的に少なく、ここを拡大していかないとスタートアップエコシステムへの資金の投下量の差も埋まっていきません。当社のように、創業直後の企業に少額の資金を出資するというファンドの運営は、スタートアップ・エコシステムの中でなければ成り立たないため、ストライクさんの力をお借りして、京都のエコシステムを形成していきたいと思っています。

京都から世界へ羽ばたくスタートアップを
―このHive Kyotoはどのようなサービス・機能を持っているのか、教えてください。
金子さん
East Venturesが投資するスタートアップ用のシェアオフィスで、現在5社が入居しています。若い起業家同士が相互に切磋琢磨し、成長とイノベーション創出を図るというコンセプトです。定期的にイベントも開催し、学生や地元の銀行・企業の方との交流を促進しています。
元々当社は東京・渋谷の「Hive Shibuya」をはじめ、5カ所ほどシェアオフィスを運営してきました。事業が軌道にのれば数年で退去していくシステムですが、卒業していった先輩起業家が後進の面倒を見るという環境が成功に導いているようです。京都でも同じことをしたいと思っています。
―営業活動などはどのようにされていますか?
金子さん
口コミや紹介で広がっているところが大きいですね。
荒井さん
私は京大で「スタートアップのM&A」という寄附講座を担当していたので、その関係性もあると思っており、大学には機会があれば積極的に出向くようにしています。
―スタートアップと事業会社の結節点としても活用し、京都発のイノベーション創出を推進したいとのことですが、どういう意図があるのでしょうか?
荒井さん
今回の共同オフィスを、事業会社などの歴史ある企業と若い企業とのネットワークづくりに役立てたいと考えています。そういったネットワークが、オープンイノベーションに繋がっていくと思います。
イノベーション人材を京都に定着させたい
―共同オフィスを開設してから、どのような手応え・成果がありましたか?
金子さん
さきほども少し触れましたが、進出後、5社の企業に投資し、その企業に共同オフィスに入居してもらいました。
荒井さん
East Venturesさんのインターン生がうちに新卒入社することになったのは、成果のひとつと言えます。ほかにも、金子さんが就職相談に乗っていた学生が、来春入社してくれることになりました。
―京都で採用活動を成功させるコツがあれば教えてください。
荒井さん
京都の学生は卒業後に7割が他府県へ流出してしまうと聞きました。京都に定着してもらうためには、経営者自ら、新卒採用に乗り出したほうがよいと思います。うちの場合、私か常務が必ず新卒の面接をするよう心がけています。就活は企業が学生を選ぶイメージですが、学生も企業を選んでいるのです。優れた人材を確保し、京都を活性化させるためには、企業側の意識改革も必要だと思います。
―進出前のイメージと進出後の現実で異なる点はありますか?
荒井さん
うれしい誤算ですが、京都市がこんなに協力的とは想像していませんでした。補助金にとどまらず、各所ご紹介くださったり、本当にフレンドリーに接していただいています。地元の金融機関も友好的で、まちに根付いた人間関係の輪が広がっていくのを感じています。

「四条烏丸クロスロード」構想の実現に向けて
―これから共同拠点をどのように発展させていきたいですか?
荒井さん
いま入居しているスタートアップが、M&Aのターゲットになってくるのはまだ先ですが、5~10年ぐらいかけて成功事例を作っていきたいですね。エコシステムは一朝一夕でできるものではないし、行政や金融機関、弁護士、税理士、会計士といった周辺の専門家たちの協力も必要です。