- VOICE
2025.12.09
京西テクノス株式会社~SDGs先進都市・京都を拠点に西日本のメンテナンス市場を拡大~
京西テクノス株式会社の代表取締役社長、臼井努氏にお話を伺いました。
京西テクノス株式会社は、東京都多摩市に本社を置く、医療機器・通信機器・計測器のメンテナンスや、ITソリューションの提供を行うサービス専門会社です。メーカーを問わず、あらゆる製品に対応できる技術力と、トラブルの受付から現場での修理・代替機の提供・機器の解析・予防保全までトータルに、かつワンストップで行う「トータルマルチベンダーサービス」を強みとしています。
西日本エリアのビジネス強化やBCPの観点から、新たな関西エリアの拠点を探していた同社は、大学が多く、人材獲得や産学連携が期待できること、医療機器・通信機器・計測器等の世界に冠たる老舗メーカーが本社を置いていることなどから、京都市を新たな拠点先と定め、京都本社を設置いただくこととなりました。
今後は、京都に根を下ろして様々な地域企業と繋がりを持ち、京都本社を中心に事業を発展させていきたいという展望を語っていただきました。
取材の詳細は下記から。

プロフィール
臼井 努(うすい つとむ)
代表取締役社長
大手電機メーカー勤務を経て、京西電機株式会社に入社。1999年、ものづくり中心だった同社の修理サービス部門を事業化。計測器分野から通信機器・医療機器分野へと事業展開し、2002年に京西テクノスを設立。2016年から海外企業向けの修理サービスをスタートさせた。「多摩ブルーグリーン賞」最優秀賞、「勇気ある経営大賞」優秀賞、「東京都ベンチャー技術大賞」奨励賞など受賞多数。
京西テクノス株式会社とは
-はじめに、御社の事業内容について教えてください。
当社は、医療機器・通信機器・計測器など、BtoBの高付加価値電子機器のメンテナンスサービスやITソリューションの提供などを主力事業とする会社です。メーカーを問わずあらゆる製品に対応できる技術力と、トラブルの受付から現場での修理・代替機の提供・機器の解析・予防保全までトータルに、かつワンストップで行う「トータルマルチベンダーサービス」を強みとしています。また、メーカーがサービス・サポートを打ち切った製品でも、慣れ親しんだ製品を使い続けたいという顧客ニーズに着眼し、古い機器を修理・再設計により延命する「京西ライフ・エクステンション・サービス(KLES)」を展開しています。近年では、計測器の動作確認・調整・修理を行う校正事業にも力を入れています。
-メンテナンスサービスの重要性についてお話しください。
かつての大量生産・大量消費・大量廃棄型経済の結果、環境汚染は進み、地球温暖化が深刻化しています。持続可能な社会の実現に向けた循環型経済が重視されるようになった今、故障した機器や旧型機器を簡単に廃棄せず、長く使い続けるためのメンテナンスサービスは、環境維持に貢献するものと自負しています。また、そうした観点から、SDGs先進都市である京都と親和性の高いビジネスモデルだと思います。

産学連携の推進と人材確保の面でも期待
-京都進出を決めた理由をお聞かせください。また、京都の事業所を地方支社でなく、本社と位置付けられたのはどうしてですか?
一番の目的は、西日本エリアのビジネス強化です。2024年度の西日本地域の売上は当社全体の5%に満たない状況で、まだまだ市場開拓の余地があります。そこで、マーケティング体制の充実を図るため、現地に統括事業所の設置を決めました。また、建物の老朽化により移転を検討していた大阪事業所も、この機に京都へ統合することにしました。
また、本社と位置付けたのは、BCPの観点からです。会社の規模も大きくなってきたので、東日本と西日本それぞれの案件にエリア別で対応することによって、東京本社に何か起こったときも事業が継続できる体制を整える所存です。京都本社には主要事業すべての部門を置くほか、経理、人事、総務等の管理部門も配置することで、リードタイム短縮と物流コスト削減を実現し、西日本のお客様の利便性も向上するだけでなく、生産性向上や社員の働き方改革にも繋がると期待しています。
―なぜ西日本エリアの拠点として京都を選ばれたのですか? 京都のどんなところに魅力を感じられたのでしょうか?
東京本社がある多摩地域との共通点でもあるのですが、大学が多いところに大きな魅力を感じました。AIなどの先端技術を活用するためには産学連携が不可欠です。最新技術の汎用化に取り組む大学の研究室とコラボレーションする上で、産学連携がしやすい環境にある京都は、エリア拠点にふさわしいと判断しました。また、京都本社の事業拡大に向け、新卒・キャリア採用も計画しているため、学生をはじめ優秀な人材獲得といった点でも期待しています。
また、医療機器、計測器、通信機器、ITなど、様々な分野の世界に冠たる素晴らしい老舗のメーカーが京都に本社を置いています。我々も京都に根付き、そういったメーカーとコラボレーションをしたいと考えています。
交通アクセスの良さもポイントとなりました。京都周辺は高速道路網がしっかりと整備されています。京都本社予定地の近くにもインターがあり、西日本各地への移動もスムーズなことから、営業活動にも最適です。
―産学連携でどんな試みをされているのですか?
「究極のメンテナンスサービスは、トラブル自体を発生させないこと」という観点から、トラブルを未然に防ぐシステムの開発に取り組んでいます。最近ではIoTによって機器の稼働状態をリモートで見ることができ、故障が起こった場合もお客様より先に把握できます。24時間365日送られてくるデータをAIで解析し、トラブルの予兆を感知するや否や先手を打って、トラブル発生自体を抑制する仕組みです。こうした取組は産学連携の一環として、電気通信大学や東京科学大学の学内ベンチャー企業と協働して進めています。
市からの様々な支援
―京都へ進出されるにあたって、どんなご苦労がありましたか?
当社の条件に合う用地が見つからず、最初の構想から5~6年かかったことです。弊社は2013年の大阪事業所開設まで京都に事業所がありましたが、事業所が手狭になったため京都市内で移転先を探したものの、物件が見つからず大阪へ移転した経緯がありました。今回は賃貸物件ではなく自社所有で考えており、西日本ビジネスの核となる規模の建物が建築できる土地面積の確保、移転する大阪事業所社員の通勤圏内という厳しい条件もあり、難航しました。何度も決まりかけてはダメになり、気持ちが折れそうになる中、市からも積極的なサポートをいただき、感謝しています。そして色んな方のご支援の中、ようやく、私たちの求める条件にぴったりの用地が見つかったことは、本当に幸運でした。おかげさまで、京都駅にほど近く、最寄りの地下鉄烏丸線十条駅より徒歩数分というロケーションで、地上6階、延床面積4,600㎡の新社屋が2026年冬に竣工予定です。

―ほかにはどんなサポートを受けられましたか?
京都市企業立地促進制度補助金をいただけることになり、大変ありがたく思っております。また、市内大学や企業の方を早速ご紹介いただきましたので、産学連携や協業の基盤づくりや、26年新卒採用にも取り組んでいるところです。ほかに、経済産業省の「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化などの大規模成長投資補助金」にも採択されました。
京都本社の規模・体制を充実させ、さらなる発展を
―京都における今後の事業展開と展望をお聞かせください。
京都本社については、なるべく早い段階で100人規模を目指し、将来的には東京本社と同等の従業員数、体制を整備する方針です。京都は滋賀や大阪からも通勤が可能なので、幅広いエリアを対象に採用活動を行っていきたいと思います。
また、当社の標榜する「トータルマルチベンダーサービス」については、今後、一つの工場や病院、プラントの中で稼働している多種多様な機器のメンテナンスサービスを丸ごと提供していくという構想があります。京都には電子部品・精密機器の大手メーカーが本社を置いていますから、当社も京都に根を下ろして繋がりを持ち、ゆくゆくはサービスを通じてお力添えさせていただきたいと願っています。
―これから京都進出を考えている企業の方にアドバイスをお願いします。
どんな業種や業態であっても、新たに拠点を構えるとなると、クリアしなければいけない様々な条件や懸念事項があると思います。進出を検討されているなら、私たちの経験からまずは市に相談されることをお勧めします。当社の場合は用地探しの段階からお世話になり、関連各所へのご紹介なども含め、企業誘致推進室の皆様から手厚いサポートをいただきました。補助金制度など、進出にあたっての支援体制も多数整っていますが、進出後の伴走支援にも力を入れていることを伺い、大変心強く思っています。進出がゴールでなく、京都を中心に事業を発展させ共存共栄していくことが大切ですから、末永く信頼関係を育んでいきたいと思います。
