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2025.12.18

株式会社CoPalette~伴走支援によるリズムが事業の推進力となる~

株式会社CoPaletteの代表取締役CEO、山本新氏にお話を伺いました。
京都で創業し3年目を迎える株式会社CoPaletteは、エンジニアとイベント主催者を最適にマッチングさせるハッカソン(注1)プラットフォーム「CraftStadium」を運営しています。同社は、開発に集中できる落ち着いた自然豊かな環境に魅力を感じ、京都を拠点に選びました。
今後はAI時代の到来を見据え、プラットフォームのサービスの深化やAI開発ツールとの連携により、エンジニアと企業が新しい手法で協創できる「次世代の開発インフラ」の構築を目指すという展望を語っていただきました。
取材の詳細は下記から。(取材日:2025年7月9日)

(注1)ITを駆使してシステムを解析するという意味の「ハック(Hack)」と「マラソ(Marathon) 」を組み合わせた造語。プログラマーやデザイナーなどがチームを組み、規定の時間内でソフトウェア開発を行い、その成果を競い合うイベント。

プロフィール

山本 新(やまもと しん)
代表取締役 CEO

2021年に同志社大学経済学部入学、在学中。ITコミュニティの代表やHRスタートアップでフロントエンジニアとして数社実務を経験。その後(株)プレイドにてカスタマーエンジニアとして数カ月従事しbiz devの架け橋の役割を学ぶ。2023年5月、株式会社CoPaletteを創業。

株式会社CoPaletteとは

-はじめに、御社の事業内容について教えてください。

当社は、ハッカソンプラットフォーム「CraftStadium」の企画・開発・運営を中心に行っている会社です。創業3年目のスタートアップで、現在の従業員数はアルバイトを含めて5人です。「CraftStadium」では、エンジニアが自身のスキルや興味に合致したハッカソンに出会えるようターゲット層に特化したハッカソンを掲載しています。また、主催者も求める技術を持つ参加者と効率的にマッチングできるよう募集要項を最適化するなど、エンジニアと主催者をつなぐサービスを行っています。

-どのようにしてこの事業を思いつかれたのですか?

大学入学の頃からハッカソンにたびたび参加し、2年次からは自身でハッカソンを主催するようになったのですが、もっと利用しやすいプラットフォームがあればいいのに、という思いがありました。その経験から、参加者と主催者、双方のメリットを重視したサービスを立ち上げる決心をしました。アメリカには「デブポスト」という同様のサービスが10年ぐらい前からあるものの、日本では未だ発展していません。それならば満足のいくサービスを自分で作ろうと思い立った次第です。

最初の挑戦と挫折を経て、新たなサービス作りへ

-学生起業した経緯をお話しください。

高校の頃からビジネスに興味があり、Web上のサービスを作って事業化したいと考えていました。受験勉強から解放されたタイミングで、独学でフロントエンドの勉強を始め、社会人エンジニアの勉強会や大学のエンジニアサークルに参加しながらハッカソンにも参加するようになりました。大学1年生の3月からHR系のスタートアップでエンジニアのアルバイトとして実務経験を積み、2年生のとき「関西ビギナーズハッカソン」という宿泊型ハッカソンを企画してサービスを提供し始めました。そこへスポンサーが付き、企業との取引のために会社組織にしたのが起業のきっかけです。そのITコミュニティの代表を務めてみて感じた課題を解決するために始めたのが、エンジニアのコミュニティ運営ツール「CoPalette」で、会社名の由来となっています。

-では、当初思い描いていたよりも早い段階で起業されたのですね。

はい。便宜上、会社を設立したものの、最初のサービスは事業化に至らず挫折。CX(顧客体験)プラットフォーム等のSaaS(注2)を開発・運営するITサービス企業のインターンシップに参加し、ITエンジニアとしての就職も考えたりもしました。しかし、やはり自分でサービスを作って運営してみたいという思いを諦められず、ハッカソンプラットフォーム「CraftStadium」を立ち上げて本格的な事業展開をスタートさせました。

(注2)Software as a Serviceの略。インターネット経由でソフトウェアの機能を提供するクラウドサービスの一種。

「CraftStadium」ではハッカソンのイベントも主催。

事業の推進力となった伴走支援の定例報告会

起業後はどんな支援を受けられましたか?

まず2023年6月に、同志社大学産官学連携支援ネットワークの「社会起業家養成塾」を紹介してもらいました。メンターが半年ほど伴走し、事業計画の策定を支援してくれるものです。このときはテンプスタッフ(現:パーソルテンプスタッフ)出身のベテラン経営コンサルタントである本田凛太郎氏がメンターとして、経営周りの様々な相談にのってくださいました。
同年10月には、知恵森(京都知恵産業創造の森)と日本政策金融公庫が共催する「ビジネス実践ラボ」に採択されました。学生を対象とした起業体験プログラムで、支援金をいただき、知恵森の方や中小企業診断士・税理士にビジネスプランのブラッシュアップなどを指導していただきました。
2024年8月には、大阪イノベーションハブ(公益財団法人大阪産業局)が運営する「関西テック・クリエイター・チャレンジ」に採択されました。これは、革新的なアイデアを構想し、その実現に向けて挑戦する若手テック人材を応援するプログラムです。活動費を提供していただき、未踏(注3)経験者を中心としたプロジェクトマネージャーに5カ月間マン・ツー・マンでメンタリングしていただきました。
2025年1月には、京都市の「市内初進出支援制度」を申請しました。補助金の他には、同居している株式会社ストライクの社員と市が運営しているKyo-working交流会に2回ほど参加しました。ターゲット層とつながれたのは収穫だったと思います。

(注3)2000年から独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が開始した「未踏IT人材発掘・育成事業」を指す。ITを駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイデアと情熱を持った人材を支援する事業。

プロダクト主導のスタンスにぴったりの京都のまち

-京都で起業した理由を教えてください。京都を拠点とするメリットはどんなところにありますか?

京都を拠点としている理由としては、学生時代を京都で過ごし、自然豊かな環境が気に入っていることが挙げられます。出身は大阪ですが、京都のほうがゆったりしていて性に合いますね。営業先の企業は、確かに東京のほうが多いですが、当社が目指すプロダクト主導の事業展開においては、オフィスをどこに構えても関係ありません。京都のまちは落ち着いた集中しやすい環境で、開発拠点に適していると思います。京都-東京間は新幹線で2時間強とアクセス良好ですから、投資元のVCであるイーストベンチャーズの東京オフィスを訪問するときなども、楽に行き来できます。

―プロダクト主導とはどのような事業スタイルですか?

プロダクトそのものの魅力を向上させ、十分に顧客を育てた上でクロージングを行うことで商談率を高めていくプロダクト主導の営業方法です。具体的には、「ハッカソン」と検索したとき上位表示されるためのSEO対策を充実させたり、閲覧者が「ハッカソン」を主催したくなるようナーチャリング(注4)を行ったりします。こうしたプロダクトレッドグロース(注5)と呼ばれる営業・マーケティング手法を理想としています。

(注4)「顧客育成」を意味するマーケティング用語。見込み顧客の購買意欲を高め、最終的に顧客へと転換させるための活動を指す。
(注5)Product-Led Growth(PLG)。営業担当者の力によって製品を売るのではなく、製品が直接ユーザーに価値を伝えて製品の質や魅力を高めることで購入へと促し、売上げを向上させるよう導くビジネスモデルを指す。

多様なイノベーションアウトプットプラットフォームに

―京都における今後の事業展開もお聞かせください。

シード期のスタートアップとして当面の目標は、まず生き残ることです。それこそが「スタートアップの都・京都」を盛り上げていくことにも繋がると認識しています。当社の事業は日本ではまだ新しいサービスなので、ちゃんと市場を開拓してビジネスを回していくことが大事です。今後は、ハッカソンに特化したプラットフォームとして、サービスの深化を図っていきます。特に、AI時代の到来により開発の在り方が大きく変わる中、CraftStadiumがAI開発ツールと連携した次世代のハッカソンプラットフォームとして、エンジニアと企業が新しい開発手法で協創できるインフラになることを目指しています。結果的に事業開発に対して推進力と熱量を持ち合わせた人材が集まる場となれば、その事業領域の参入障壁はかなり高いものになるでしょう。すると、そこにプールされた人材を欲しがる企業がたくさん現れますから、採用関係はもちろん、研究開発や新規事業開発といったオープンイノベーションの市場に飛び込んでいければ、さらに大きな市場を狙えるのでは、と夢を膨らませています。

―将来、起業したいと考えている人へアドバイスをお願いします。

起業の目的は人それぞれで、いろんな戦い方がありますが、新しい価値を創出しようという思いがあるなら、自分の武器を持っておくことが必要です。その武器となるのは、経験やスキルです。ハッカソン関係の事業でも、関連の知識や運営経験がなければ、商談に臨んでも説得力に欠けてクロージングに至らないでしょう。起業を志すこと、イコール、ビジネスプランを立てて会社を設立することではありません。もっと広い観点で、起業したあとビジネスが成功する確率を上げるために、現場での経験や実践的なスキルを習得しておくことをお勧めします。

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