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2025.12.23

株式会社たきコーポレーション~UXデザイン教育から拓く新たな市場形成とネットワーク構築~

株式会社たきコーポレーション執行役員、内山堅氏にお話を伺いました。
株式会社たきコーポレーションは、広告・Webサイト、企業や商品のブランディングなど、さまざまなクリエイティブワークを通して、広告宣伝全般の企画制作を手がけるデザイン会社です。同社は、UXデザイン市場を広げるため、UXデザインの発信の場となる地方拠点の設置を検討するなか、東京からのアクセスの良さ、自治体の支援の手厚さに魅力を感じ、UXデザイン市場の拡大や事業拡大、採用の強化にも繋がる地方拠点として京都を選びました。
今後は、京都だからこそできるような新しい取組を模索して、ゆくゆくは京都のクリエイティブエコシステムの一員として地域貢献や地場に近い事業を展開していきたいという展望を語っていただきました。

取材の詳細は下記から。(取材日:2025年7月7日)

プロフィール

内山 堅(うちやま けん)
株式会社たきコーポレーション 執行役員/UXデザインカンパニーIDEAL代表

出版社勤務を経て、株式会社たき工房(現たきコーポレーション)に入社。アカウント、プロデュース業務に従事。現在、UXデザイン専門カンパニーIDEALの代表として、クライアントの事業支援を中心に、地域活性化、公共サービス、教育分野など、UXの社会実践化を進める。UXインテリジェンス協会認定パートナー。2024年より京都にシェアオフィス拠点を設ける。

株式会社たきコーポレーションとは

-はじめに、御社の事業内容について教えてください。

当社は、広告プロモーションに関わるクリエイティブ制作全般を手がける会社で、取引実績は5,000社強に及びます。1960年の創業以来、グラフィック広告から事業領域を広げ、ブランディング、CI/VI・アプリケーション開発、UI/UX開発、パッケージデザイン、プロモーション、グラフィック、Webサイト、映像・動画、インタラクティブコンテンツ開発など、さまざまなクリエイティブワークを通して、あらゆるコミュニケーションの企画・制作業務を行っています。私が代表を務めるUXデザイン部門では顧客の事業・サービスなどの支援ビジネスを行っています。

-御社の特色・強みはどんなところですか?

社員数約440人、クリエイター職だけで約300人というスケールメリットを活かした体制が強みです。デザイナーはもちろん、マーケター、プランナー、コピーライター、フォトグラファーが揃い、撮影・CG まで社内で対応できますので、ワンストップで対応可能です。

-ご担当のUXデザインとはどんなものなのでしょうか?

UXとは User Experience(ユーザー体験)の略で、ユーザーがサービスや製品を使う中で得る一連の体験全体を指します。例えばWebサイトであれば、デザインの見やすさや操作のしやすさといった表層だけでなく、情報が探しやすいか、ストレスなく目的を達成できるかといった“体験の流れ”そのものがUXです。私たちIDEALが大切にしているのは、ユーザーの声や行動を丁寧に観察・分析し、その根底にあるニーズや不満を把握した上で、事業の成長につながる体験を設計することです。

京都の大学で教えながらUX に関する知識を発信

-京都へ進出した理由をお聞かせください。

発端は、UX デザイン市場の拡大という課題でした。UX デザインは、国内ではまだビジネスとして一般化していない分野のため、市場もあまり大きくありません。UXデザイン市場を広げるためには、私たちが持つUXに関する知識を発信していく必要があり、発信の場にもなる地方拠点の設置を検討していました。
いくつかの候補地の中で、東京から新幹線で2時間強というアクセスの良さ、自治体の支援の手厚さに魅力を感じました。また、京都精華大学でUX デザインの講義を受け持つ話が持ち上がったこともポイントになり、UXデザイン市場の拡大に加え、事業拡大、採用の強化にも繋がる地方拠点として、総合的に勘案して京都を選びました。

市の仲介で広がりゆく京都のコミュニティ

-京都へ進出されるにあたって、京都市からはどのようなサポートを受けられましたか?

初年度はお試し立地支援制度を活用し、シェアオフィスの利用料と交通費の一部を支援していただきました。今年度は市内初進出支援制度を申請させていただいています。
制度上の支援以外にも、進出企業の方や関係各所の方々をご紹介いただき、助かりました。社内にOB・OGがいないと接点を持つのが難しい京都市立芸術大学と繋がることができたのも、市の紹介があったからです。オフィス探しの際には多数の物件をご紹介いただき、新築で竣工される「Whatever SHIMOGAMO EAST」というシェアオフィスにタイミングよく入居することができました。自分たちだけでは、とても見つけられなかったと思います。

-実際に入居してみられて、感想はいかがですか?

京都市左京区にある「Whatever SHIMOGAMO EAST」は京都精華大学へのアクセスが良く、静かなロケーションが気に入っています。運営会社が設備や事務作業のアテンドなど、細かいことにも柔軟に対応してくれますし、パーティの開催やオンラインでの入居者同士のコミュニティ形成を後押ししてくれるのもいいですね。

採用や書籍出版に結実したUXデザイン教育

-京都精華大学で講義を担当することになった経緯と、講義の内容について教えてください。

当社が加入している一般社団法人UXインテリジェンス協会で、UXデザイン教育に関する分科会から複数の大学と繋がりができ、その関係で声がかかりました。2023年の夏休みにプロトタイプの講義を行い、2024年度からはUXデザイン・サービスデザインの基礎実習と、当社が以前より関わっている輪島塗を題材とした社会実践実習を担当しています。

-UXデザインについて教え始めて、どんな手応えを感じておられますか?

学生たちが真面目に取り組んでくれている様子をうれしく思っています。デザインやクリエイティブの力はまだまだこれからですが、物事に対する真摯な姿勢や考え方に驚いています。3年生を対象とする社会実践実習では、当社の輪島塗のプロジェクトの一環として、学生を引率し、リサーチの一環として現地を訪れます。現在は、震災後の地域支援と海外展開を見据え、学生たちと共同でプロトタイプ開発を進めています。将来的に輪島塗に関わっていきたいという学生も出てきました。今年10月に京都市中京区のQUESTION(クエスチョン)で行うカンファレンス「Learning UX Design Conference 2025 in KYOTO」では、輪島塗プロジェクトの発表を学生に任せる予定です。

京都精華大学での講義(左)輪島塗プロトタイプ(右)

-京都精華大学での指導は御社にとってどんな成果がありましたか?

基礎知識がまだ十分でない学生に一から教える経験は、企業向けの説明とは異なる学びと気づきをもたらしてくれました。今年、大学での講義内容や気づきをベースにして、UXデザインの書籍を出版することもできました。
また、大学でのUXデザイン教育は採用面での成果に直結しています。今年は京都精華大学メディア表現学部1期生を新卒採用しました。

京都精華大学での講義内容をもとに編集した書籍『FigmaではじめるUXデザイン入門』

京都のクリエイティブエコシステムの一員に

―京都オフィスでの具体的な活動内容についてお聞かせください。

京都精華大学での講義のための拠点として機能しており、また、UXデザイン市場形成とネットワーク構築のためイベント企画にも力を入れています。昨年は、ソフトバンク、UXインテリジェンス協会、人間中心設計推進機構や大学の先生の方々を招いて、UXデザインのイベントを開催しました。10月にも同様のイベントを開催予定ですが、今年は京都の他大学にもお声がけして連携の輪をさらに広げています。イベントはUXデザインへの理解を広め浸透させていく大切な取組として、引き続き注力していく方針です。

主催したUXデザインのイベント「Learning UX Design Conference in KYOTO」

―京都進出から1年経ち、見えてきた課題などはありますか?

京都の企業との接点や繋がりがまだできてないのは、気になっています。市が開催する交流会などにも何回か参加させていただき、地元企業や進出企業の方々と面識を持つ機会は得たのですが、仕事に繋げるところに至っていないのはもったいないことなので、京都オフィスに常駐メンバーを配置して対策を練っていきたいですね。
理想は公共事業などのプロジェクトに一緒に取り組むことですが、仕事に繋がるような何かがあれば接点は増えていくと思います。普段の活動とは違いますが、先月、一般社団法人EX Gravityという宇宙における体験設計の団体を立ち上げました。この団体では、宇宙の専門的な知識を持った方だけではなく、様々な業態や業種の方を募って、この先の航空宇宙産業の未来を一緒に考える取り組みを行っています。普段の活動だけではなく、こういった取り組みを通じて京都の企業と末永く繋がっていけたらと思います。

―京都における今後の事業展開もお聞かせください。

まずは地域とのつながりを広げて、当社が得意とする支援ビジネスや教育などの機会を通して、京都のみなさんとの付き合いを深めていくことが目標です。スタートアップや他業種の方と協力関係を育む中で、一緒に新しく事業を始めたり、協業できればいいですね。
京都だからこそできるような新しい取組を模索して、ゆくゆくは京都のクリエイティブエコシステムの一員として地域貢献や地場に近い事業を展開していきたいですね。

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