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2026.01.20

株式会社ゼロワンブースターキャピタル~京都でスピンオフ・スピンアウト支援に取り組む~

株式会社ゼロワンブースターキャピタルのパートナー、立山冬樹氏にお話を伺いました。
ゼロワンブースターキャピタルは、シード期のスタートアップへの投資を得意としており、特に事業会社からのスピンオフ・スピンアウト支援に力を入れているベンチャーキャピタルです。企業、行政、大学などの事業創造に関する支援事業を展開するゼロワンブースターとともに、スタートアップに最適な成⻑戦略をサポートし、最適なイグジットの実現を⽬指してファンドを運営しています。
事業会社の中に眠る才能をスピンオフ・スピンアウトによって発掘し、日本もしくは世界へ変革を起こす事業に対して出資を行うプログラムである「SPINX」を2023年にスタートさせ、世界に羽ばたく新たなビジネスへの創出を目指しています。
事業の拡大を目指し、地方拠点の設置を検討していた同社は、大学、研究機関が集積している京都に新しい事業が眠っていることを期待して、2025年に進出をしました。
また、今後は京都に腰を据えてしっかり取り組んでいきたいという展望を語っていただきました。

取材の詳細は下記から。(取材日:2025年9月9日)

プロフィール

立山 冬樹(たちやま ふゆき)
株式会社ゼロワンブースターキャピタル General Partner

金融機関にて国内大型プロジェクトファイナンス、シンジケートローン、コンサルティング業務に携わった後、金融系VCにて投資グループ長としてベンチャーキャピタル業務に従事。その後、M&A大手の㈱ストライクに入社し、スタートアップに特化したM&A仲介・アドバイザリー業務を通じて、複数のM&A実行を支援。
現在はゼロワンブースターキャピタルのパートナーとして、VCファンドの運営全般に取り組む。

-はじめに、御社の事業内容について教えてください。

当社はゼロワンブースターのグループ会社で、シード期のスタートアップへの投資を強みとしており、特に事業会社からのスピンオフ・スピンアウト支援に力を入れています。2012年にゼロワンブースターが設立され、起業家・社内起業家の事業化支援等を中心に事業を拡大。2022年のホールディングス化の際に、VC事業を独立させてゼロワンブースターキャピタルを新設しました。以後、事業会社との共創機会を提供し、資金支援に加えて実証・連携を通じた事業成長を一貫して支援しています。

製造業が強く、技術集積度が高い京都に着目

-ゼロワンブースター創業から東京で活動してこられて、進出先として京都を選ばれた理由をお教えください。

強い技術や新しい事業の種はどこにあるかと考えたとき、いろんな産業が集積している場所として、京都が浮かびました。京都は大学が多く、研究機関もたくさんあります。そして産業特性で見たとき、GDPに占める製造業の割合が約25%と全国平均15~20%をはるかに上回っています。ということは、製造に紐づく技術やR&D(研究開発)が豊富で、そこで眠っているものがあるのではないかという京都への期待感が進出の理由です。

-その後、どのような経緯で京都オフィスをSIGHTS KYOTOに決められたのでしょうか?

京都が進出先の候補にあがっていたタイミングで、ちょうど「IVS2024 KYOTO」(※1)が開催されており、そのサイドイベントでSIGHTS KYOTO(※2)を運営する西澤徹生さんと出会い、すっかり意気投合。単なるコワーキングスペースではなくコミュニティとしての機能を重視している点など、人と人との偶発的なつながりが予期せぬ価値を生み出すという当社の信念にも共通するものがあり、大いに盛り上がってすぐさま内覧に行き、その場で入居を決めました。いろんなコワーキングスペースを見て回っていましたが、SIGHTS KYOTOは立地も設備もいいし、1階がバーというのも人とのつながりを大事にする当社にぴったりで、一目で気に入りました。

※1 「IVS2024 KYOTO」:国内最大規模の国際スタートアップカンファレンス。国内外の起業家、投資家、クリエイターが集結し、交流を通じて投資や協業、人材獲得、ビジネス創出を図る。
※2 SIGHTS KYOTO:京都・東山にある、バー・コワーキングスペースを兼ね備えた複合施設。
  https://sights-kyoto.com/

-京都へ進出されるにあたって、京都市からはどのようなサポートを受けられましたか?

2024年度は、お試し立地支援制度を活用し、コワーキングの利用料と交通費の一部を支援していただきました。2025年度には京都へ進出し、市内初進出支援制度を活用させていただきました。京都市の企業誘致推進室の方には拠点探しの際にもいろんな物件をご紹介いただき、感謝しています。京都オフィスとして利用しているSIGHTS KYOTOの利用頻度は月によってまちまちですが、少なくとも月1回は必ず訪れるようにしていますね。

眠っている技術や知見を発掘・活用し、新たな事業創出を目指す「SPINX」

京都進出と同時に始動されたという起業プログラム「SPINX」について教えてください。

「SPINX」は、事業会社の中に眠る才能を“スピンオフ・スピンアウト”によって発掘し、日本もしくは世界へ変革を起こす事業に対して出資を行うプログラムで、2023年に東京都との協定事業という形でスタートしました。これまで、多様なバックグラウンドを持つ参加者に対し、専門家等によるメンタリングや、参加者の要望に応じて投資家や事業会社とのネットワーキングの機会を提供してきました。4期にわたり、約90社が参加し、プログラム修了後には、起業に至ったケースや、事業会社内での新規事業推進に活用されるケース等、多数の成功事例が生まれています。2025年1月には京都第1期を開催。以後、東京と並行する形で開催し、2025年10月から京都第3期の募集を開始しています。知恵森(京都知恵産業創造の森)さんがパートナーとして参画してくださり、市の後援もいただいて、金融機関や企業と連携の上、新たな事業創出を目指しています。
また、先日はSIGHTS KYOTOで勉強会を開催しました。京都銀行、京都中央信用金庫、京都信用金庫という京都の三大金融機関の方たちを講師としてお招きし、将来の出資先となる可能性も含めて、つながりを作ってもらうという目的で開催したものです。1階のバーでは、「SPINX」の関係者の交流会でいつも盛り上がっていますね。

SIGHTS KYOTO 3階のオフィスに座布団を並べて開催した「SPINX」の勉強会

京都での手応えはいかがですか?

スピンオフ・スピンアウト支援へのニーズが感じられますし、「SPINX」参加者は事業への意欲の高い方が非常に多く、面白い事業の種がたくさんあるという感触です。そもそも京都は、島津製作所やGSユアサのように、昔からスピンオフに積極的なエリアです。商家で行われてきた「のれん分け」も本質的にはスピンオフと同じ発想ですよね。また、任天堂や村田製作所など、京都発祥の大企業には、時代に合わせて事業形態をうまく変えて成長してきた歴史があります。そう考えると、京都は「SPINX」というプログラムに非常にふさわしいまちだと思います。

-「SPINX」にかける思いをお聞かせください。

一般的なスタートアップと違って、スピンオフの難しさは、元の所属企業との関係をどう調整するか、というところにあります。2018年頃から働き方改革やいろんな外部環境の変化があり、多くの企業が社内新規事業に積極的に取り組んできました。しかし、その後の事業展開や元会社の中での位置付けに悩む事業も一定数発生しています。たとえば、売上50億円を達成し、上場も視野に入る規模まで成長した事業でも、売上数兆円の企業の中では規模が小さいとみなされ、継続を渋られるケースがあります。また、社内ベンチャーを立ち上げて、社内では賄えない能力を外部から募るとき、親会社のイメージに引きずられて採用がうまくいかない、適切な報酬体系を組めない、ストックオプションが発行できないなどの要因によって、採用競争力が見劣りしてしまうケースもあります。
そうした、社内では継続しにくいけれど畳んでしまうには惜しい事業、企業の中にあるがゆえに制約がかかり眠ったままになっている革新的な技術、優れた人材を発掘し、世界に羽ばたく新たなビジネスへと成長させていく手伝いをしたい。それが「SPINX」の狙いであり、私たちゼロワンブースターキャピタルの願いです。

「スタートアップが成長していけるまち」「優秀な人材が定着するまち」に

―ビジネス拠点として、京都のどんなところに魅力を感じますか?

改めて京都という国際的な認知度が高いまちのブランド力の高さを実感しています。また、長い歴史や伝統に加えて、製造、研究、開発といった面でも東京や他都市にはない魅力を備えていて、対外的な発信をするための要素が揃っており、グローバルな展開も視野に入れた事業者にとって大きなアドバンテージになると思います。

―逆に、ビジネス都市としての課題はどんなところにあると思われますか?

京都に限らない話ですが、「夢を叶えるためには東京へ行かなければいけない」という状況を変えていくことが大事です。この数年、地方でも起業はすごく増えてきました。でも、やる気のある起業家はみんな東京へ行ってしまうんですね。新卒採用についても同様で、京都には大学が多いけれど、卒業生が京都にとどまって働くのは2割弱と聞きました。これは本当にもったいない話です。京都はまちとしての魅力があり、産業も発達していて、経済規模がしっかりしているのだから、もっとPRすべきです。様々な企業が集まることで、スタートアップが成長していける環境や、ポテンシャルの高い若者が希望の職種で能力を発揮できる環境がもっと整っていくと思います。

腰を据えてスピンオフ・スピンアウト支援に取り組む

―京都で活動してみて、進出前のイメージと異なる点はありますか?

実は京都に来るまでは、ちょっと警戒している部分もありました。「京のぶぶ漬け」の話のように、地元とのつながりもない人がうっかり行ったら意地悪をされるんじゃないかと……(笑)。実際は全くそんなことはなく、自治体や金融機関の方も良い人ばかりで、人との出会いには本当に恵まれ、今日に至っています。

―今後の京都での事業展開についてお聞かせください。

スピンオフ・スピンアウト支援は、実現までにとても時間がかかるものです。もちろん、ただ時間をかければいいというわけではありませんが、焦って「一年に何件」といった目標を掲げてしまうと、目的と手段が逆転してしまう恐れがあります。やはり時間をかけてしっかり耕すところからやっていかなければいけないので、長い目で考えていく必要があるでしょう。その点、京都は創業100年を超える老舗が全国で最も多い、スパンの長いまちですから、当社はこれからが勝負どころ。腰を据えて取り組んで、まずは一つ目の実績を作ることが重要だと考えています。

―これから京都進出を検討している企業や起業家の方にメッセージをお願いします。

進出にあたって、初めの一歩をどこで踏み出すか、そこでどんな人たちと知り合えるかは重要なポイントです。地縁のないまちへ行くのはただでさえハードルが高く、さらに京都となると、私が進出前に警戒していたようなイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実際に活動し始めると京都の人の温かさに驚くはずです。先入観を持たずに安心して飛び込んできてください。困ったときにはSIGHTS KYOTOへ来ていただければ、力になりますよ。

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