What if I work and
live in Kyoto…

  • INTERVIEW

2022.04.13

メールインタビュー『Notion』CEO Ivan Zhao氏に聞いた、開発に明け暮れた日々で京都が教えてくれたもの

日々、PC上で仕事をこなす人ならだれもが費やす「アプリ間を渡り歩く」というロスタイム。細かいTo Doリストから年間計画までのスケジュール管理、発表用の資料づくり、ちょっとした表計算、メモ。こうしたアプリを別々に開くことなく、ひとつのツールの中で使えたら・・・。「Notion」は、そうした日々のタスクやメモ、ドキュメント、プロジェクト、wikiを一元管理しながら、見た目を自分好みにカスタマイズもできる話題のツール。2022年現在、全世界で2000万人のユーザーを獲得しているNotionの共同開発者&CEO Ivan Zhao氏にメールインタビューを行った。

カリフォルニアの新しいNotionオフィス

―Notionの原型は京都で開発されたとのことですが、どのようないきさつがあったのでしょうか。また京都での滞在はいかがでしたか?

Ivan Zhao氏

実は、Notionは2015年に、開発打ち止めの危機に瀕していました。何か足りないピースがあったのです。私たちは、自分たちがカッコいいと思う製品を作っていたのは確かですが、今から考えると人々が必要としている製品を作っていたわけではありませんでした。私たちの使命は、PCを使う人たちが誰でも自分自身でソフトウェアをカスタマイズできるようなツールを提供することでした。もちろん現在もそれは変わりません。でも当時は、何か物足りなさを感じていました。そこで共同創業者と私は、もう一度初心に返ることにしました。足りない「何か」を探すために、京都に一か月ほど逗留したのはちょうどその頃でした。

京都では、とても価値あるいい時間を過ごせたと思います。
とても美しくて、「デザイン」というものに関して多くのインスピレーションを与えてくれた街でした。
共同創業者のサイモンと私は滞在中、ほとんどすべての時間をコーディングと製品開発に費やしていましたが、少し時間ができると、息抜きとして自転車に乗って街や川沿いを散策したりしていました。

滞在場所を選ぶとき、私たちは、穏やかで集中できる場所でありつつも、何か新しいことに引き合わせてくれるような場所を探していたのですが、京都はまさに正しい選択でした。

―Notionの一ユーザーとして、そのプロダクトや体験、コミュニティのデザインにCreativityとCraftmanship、そしてCultureへのリスペクトを感じています。IvanさんがNotionを作り上げる中で最も重視しているのはどんなことでしょうか?

Ivan Zhao氏

私たちのツールによって世界をユビキタスな現実にすること、それが私たちのミッションです。つまり、地球上のすべての人、すべてのチームが、自分達のニーズに合わせてソフトウェアを使い、組み立て、調整できるようにすること。
そこでは、「ツールがユーザーに寄り添う」という楽しさや、思い通りに動作させる喜びも味わってもらうことを目標としています。

みなさんの仕事や生活にぴったりと馴染むような、人それぞれのワクワクするような体験を自分たちのソフトウェアによって作り出す…、そんな価値観を大切にしています。
あったらいいなと思うソフトウェアをユーザー自身で自由自在にカスタマイズできれば、世界はより多くのことを実現できると思いませんか?

―Notionのそういった思想に、京都から受けたインスピレーションが生きているといくつかの記事で知りました。職人の伝統と技巧への誇り、細部へのこだわり、ホスピタリティに感銘を受けたそうですが、どんなことを体験されたのか、そしてどんなことを感じたのか、聞かせてください。

イームズチェアとアートを配した新オフィス
Ivan Zhao氏

特に印象的だったのが京都の建築です。
シンプルでいて美しく、時代を超越しながらも、すばらしく機能的。京都には日本の伝統工芸も数多くあり、職人が何十年もかけて完成させた芸術品を見ることができます。
個人的には、芸術や職人の技を見たり、体験したりすることができるところを魅力的に感じました。サイモンと私は、こうした手仕事の感覚をNotionにも取り入れ、高品質で洗練された製品にしたいと思いました。

また、京都滞在時に訪れた料理店のもてなしや、地方の温泉で受けたホスピタリティはNotionのユーザーへのアプローチに大きく貢献しています。おもてなしの心で喜んでいただくことは、私たちがビジネスのあらゆる場面で考えていることであり、その考え方はすべて京都から始まっています。いま、私たちがどのように製品を作り、ユーザーにサービスを提供しているか、さらには自分たちの会社のバリューにも反映されています。
Notionのバリュー(価値観)

Notionでの仕事風景

―Notionは日本にも根強いファンが多いプロダクトですが、そういったユーザーに向けて、今後のビジョンを聞かせてください。

Ivan Zhao氏

日本のコミュニティは、私たちにとって大きな資産です。
我々はユーザーの皆様が作るテンプレート、チームセットアップ、ソーシャルメディアでの投稿、ビデオなどを見るのが大好きで、そうしたサポートには本当に感謝しています。2021年10月には、Notionの日本語ベータ版の提供を開始しました。日本のユーザーは日本語版提供前から多く、特に2020年8月から2021年8月の間に日々の利用者は4倍となっています。その他多くの大企業でもNotionをご活用いただくまでに成長しています。今年はさらにNotion Japanのチームを拡大し、より多くのお客様にサービスを提供できるようにしていきたいと思っています。

―京都にビジネスの拠点をもつことのメリットはどのような点と感じますか。

Ivan Zhao氏

京都はビジネスの中心地というよりも、歴史や伝統、観光地としての印象が強いですが、「職人の近くにいること」、これは自分のプロセスや会社、製品にさまざまな影響を与えることができるので大きなメリットと言えると思います。平和でゆっくりと時間が流れる京都は、特にデザイナーやエンジニア、作家になりたい方にはいい場所だと思います。集中してものごとに取り組むことができたり、学ぶべき人が身近にたくさんいたりするのも魅力です。

Notion社内でのランチ風景

―最後に、京都での滞在や移住を検討中の人に向けてメッセージをもらえますか?

Ivan Zhao氏

Be sure to explore as much as you can. It’s a great city to see by bike!
(ぜひ色々なところを見て回ってほしいです。自転車での観光に最適な街です!)

まとめ

Notionの原型を開発した京都で、美しさとデザインについて多くのインスピレーションを得たIvan Zhao氏。時代を超越する建築の機能美、職人の手仕事の感覚、そしておもてなしのホスピタリティ。
それらが、私個人も大好きなNotionというプロダクトのあり方、さらには企業のカルチャーにまで影響を与えている。2000万人の仕事とコラボレーションを支えるNotionと、京都という街への愛着が深まったインタビューだった。

聞き手/井上裕太

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