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2024.06.17
株式会社サーチフィールド~京都進出に最も効果的な京町家オフィスを選択~
サーチフィールドは、クリエイターの支援事業を行う会社で、ゲーム・マンガのイラストに特化した制作受託事業を運営しています。2008年の創業以来、東京に本社を置いて関東を中心に活動してきましたが、2023年11月、京都市・菊浜エリアの京町家にオフィスを開設。京都進出にかける思い、趣ある京町家をオフィスとして選んだ理由などを代表取締役の中山直人氏と取締役COOの笹淵久子氏にお話を伺いました。(取材日:2024年4月24日)
プロフィール
中山 直人(なかやま なおと)<写真左>
代表取締役
1983年生まれ。高校を卒業するまでの10年間を海外で過ごす。大学卒業後2008年7月に株式
会社サーチフィールド創業に参加。イラスト制作事業「GIKUTAS」の事業責任者として売上拡大を
牽引。2018年代表取締役就任。
笹淵 久子(ささぶち ひさこ)<写真右>
取締役COO
関西学院大学を卒業後、株式会社USEN本社勤務を経て2011年に株式会社サーチフィールドへ
入社。2014年よりイラスト制作事業「GIKUTAS」の事業部責任者を務め、2023年11月より京都オ
フィス立ち上げに従事。
株式会社サーチフィールドとは
-はじめに、御社の事業内容について教えてください。
中山さん
当社は、「クリエイターの活躍の場を見つける」という理念のもと、クリエイター支援を中心に、さまざまな事業を行っています。イラスト・マンガ特化型のクラウドソーシングサービス「GIKUTAS(ギクタス)」を通じて、ゲーム・マンガ業界の企業とクリエイターをつなぎ、主にイラストのキャラクターデザイン制作を請け負うほか、年々変わっていくクリエイターの課題を解決できるようなサービスづくりも展開しています。「GIKUTAS」ではゲームや広告、マンガの制作過程でイラストビジュアルが必要になった場合、求められているイメージをヒアリングして、クライアントのニーズに合うクリエイターをマッチングします。そして、スケジュール管理や品質管理など、制作全体の進行・管理をします。当社に登録しているクリエイターだけでなく、SNSやネットで新たなクリエイターを発掘する場合もあります。
笹淵さん
クリエイター支援といっても一方的にサポートするというより、ビジネスパートナーのようなイメージです。単なる仲介・人材紹介ではなく、その後の制作の過程まで弊社で担保させていただくのが特徴で、いわゆる制作代理店の仕事です。
アフターコロナの社内課題解決を目指して
-どんな経緯で京都進出を思い立たれたのですか?
中山さん
まず前段として、コロナ禍に端を発する動きがありました。長期間の巣ごもり生活が終わり、会社としても個人単位でも、積極的に軸足を外に向けていきたいという思いが高まっていたのです。リモートワークが定着し、オフィスに出勤しなくても業務に支障が出ないことがわかったので、首都圏という枠組みを外していろんな選択肢を考えてみようと、地方に拠点を持つことを思い立ちました。そこで2022年度は、サテライトオフィスのような形でいくつかの候補地にメンバーが赴いて、実際に稼働してみました。そうしてイメージを膨らませ、検討した結果、京都に決まったのです。
-複数の候補地の中から京都を選んだ理由をお聞かせください。
中山さん
新オフィスに関しては「非合理を楽しむ」というコンセプトがありました。利便性や都市の規模も大事だけれど、東京オフィスとは異なる特色を出したかったんです。サテライトオフィスや物件探しでまちを見て回った結果、東京との差が一番大きいと感じたのが京都でした。建物の高さやデザインに規制が設けてあったり、電柱をなくしているなど、街のつくり自体にも特徴があり、東京にはない魅力を感じました。
笹淵さん
制作代理の仕事はルーティンワークが多く、ずっと同じことを繰り返していると思考停止状態に陥りがちです。そこで、ちょっとした「遊び」の要素が必要かなと感じていたときに、新オフィス開設の話が持ち上がったのです。非合理な環境だからこそ創意工夫が生まれたり、新しい発想に結びつくこともあるので、クリエイティビティを刺激する環境を物理的につくってしまおうという意図がありました。
とはいえ、コストをかけて進出するわけですから、社内の課題を解決する糸口としていくつかの条件を設けました。一つは、新オフィスを根付かせていくために、採用力のある地域であること。もう一つは、外に向けて発信していく広報力がある地域であること。あとは、商圏の拡大につながるところ。京都に関しては、コンテンツ産業に力を入れているという点で、当社の事業とすごく親和性があるように思いました。
京都らしさを満喫できる京町家オフィス
-なぜオフィスに京町家を選ばれたのですか?
笹淵さん
イラストを扱っている関係で、関連イベントができるような施設がいいという要望もあり、一般的なオフィスもいろいろ見ました。でも、せっかく京都に来るならオフィスも京都らしいものにしたいという思いと、広報拠点としてアピールできる建物という観点から京町家に惹かれました。現オフィスは、本当は予算オーバーだったのですが、良さそうな物件だからと観光気分で見に来たところ、「ここ、いいね!」とみんな一目ぼれしちゃって……。2階と別棟が民泊として運用されていて、それを引き継げば、収益を家賃に充てられると考えました。
中山さん
鴨川沿いというロケーションもポイントが高かったです。2階からの眺めがすごく良いんです。近年開発が進んでいる菊浜エリアの中でも静かで落ち着いた界隈で、私たちのような制作の仕事にはぴったりでした。京都駅から近いこともイベント開催に適していると判断しました。初めは直感で「何かいいな」と思ったんですけれど、掘り下げていくといろんな意味でドンピシャだったんです。
-入居してみて、京町家の感想はいかがですか?
笹淵さん
京町家にしては築年数が浅く、天井高もあり、フロアが広くて畳張りではないので、オフィスには向いていると思います。ただ、一から立ち上げるのは初めてで戸惑うことはありました。移転自体は東京で何回か経験して慣れていましたが、基本的に居抜きだったもので。そこで、オフィスのコンセプトを考えるところからスタートして、ネットで一級建築士事務所を探し、設備や使い勝手を整えていきました。同時に現地採用を進め、3月から私も含め2人体制になり、特注テーブルが入って働く環境は大分整ってきたと思います。ひと冬越したところなので、夏はどうかわかりませんが、京町家は京都の気候の特徴に合わせて造られているので、あまり心配していません。
中山さん
もともと東京オフィスやフルリモートメンバーが訪れた際、リフレッシュしてもらえるような空間にしたいと思っていたので、そういう意味でも満点ですね。3月にはオフィス開設記念イベントの一環として、民泊として運用する2階部分でお茶席を催しました。お招きした企業の方々にも喜んでいただけて、京町家ならではの風情を満喫していただきました。
関西圏のクリエイターとの接点となる新拠点
-京都を進出先に選んでよかったことは何ですか?
中山さん
まず採用面ですね。一つには、新卒の学生さんが多いので、そこを活かした採用計画が立てられるのではないかと考えています。もう一つは、UIターン転職への訴求です。東京と京都、どちらでも働ける環境が整ったので、勤務地に関する希望がある方々を中途で採用していく計画も進めています。また、関西圏のクリエイターさんたちとお会いする機会ができたのは大きな収穫です。長くお付き合いできるクリエイターさんとのネットワークを育んでいくためには、直接お会いすることも大事だと考えています。
笹淵さん
そうですね! 私たちの仕事では、長年お取引している方でも基本的にやり取りはメールで、しかもペンネームだったりするので、年齢や性別もわからないことがよくあるんです。先ほどお話ししたオフィス開設記念イベントでは、10年来のお付き合いのクリエイターさんと、初めて対面でお話しできてうれしかったです。
-進出前のイメージと進出後の現実で異なる点はありますか?
笹淵さん
子どもの頃から京都は閉鎖的なまちだと聞くことが多かったのですが、世代の感覚が違うのか、そういう印象は受けませんでした。むしろ京都市の方々や、京都に進出してきた他社の方々がすごく積極的に関わってくださることに驚いています。東京はビジネスライクなところがあるのですが、その点、京都は「東京から来た」というだけで興味津々!(笑)あれやこれやと雑談ベースでした話を然るべきところへ繋いでくださったりして、当初の予想以上に可能性が広がってきています。京都に進出してきた企業は、「みんなで京都を良くしていこう」という気持ちがあるのが感じられ、協業しやすいように思います。
中山さん
進出先を京都に決めてからずっと、当初から行き届いたサポートをいただいたおかげで、マイナス面でのギャップはあまり感じていません。最初に「京都に決めました」とメールでお返事した後、市職員の方がわざわざ東京オフィスまで来られて、支援制度や補助金について説明してくださったときは感激しました。メールでも、困ったことや疑問に思うことは何でも相談できて、とても心強かったです。たとえば民泊経営は、私たちにとっても当初の計画外の出来事だったのですが、違う部署の方にまでいろいろ問い合わせてくださって、本当に助かりました。
京都市が注力するコンテンツ産業に着目
-ビジネス拠点としての京都の魅力はどんなところにあると思われますか?京都における今後の事業展開もお聞かせください。
笹淵さん
ゲーム・マンガ・アニメなどクリエイティブの土壌が豊かなまちであることに着目しています。もともとアニメスタジオなども多く、京都国際マンガ・アニメフェア(※1)の開催地でもあり、京都市もコンテンツ産業に力を入れていらっしゃいます。先日、クリエイティブ産業振興室をお訪ねしたら、キャラクターに京都ならではの衣装を着せたオリジナルグッズなどがいっぱいあって……もう専門店かと思うくらい!(笑) 京都発のアニメコンテンツやコラボ企画、聖地巡礼イベントもいろいろあり、新しいマーケットを創出できる可能性を感じています。
また、当社は受託事業がメインなので、自社サービスを介してブランディングしていくには難しい面があります。キャラクターはしゃべったり動いたりして、初めて認知されるところがあり、イラスト単体だと、アニメやマンガ、ゲームよりコンテンツ力が弱い側面もあります。そんな中、今後イラスト単体での価値をどう上げていくかというところが課題となっています。そこで、将来的には京都市と協業し、市がもつIP(※2)活用した商品開発などに携わることで、相乗効果が得られないかと期待しています。民泊もインバウンドがメインなので、海外の方に絶大な人気を誇る日本のアニメ・マンガを、イラストのコンテンツでアピールする仕掛けを構想中です。
※1 2012年から京都市で開催されているマンガ・アニメ関連の総合見本市。
通称「京まふ(KYOMAF)」。https://kyomaf.kyoto
※2 Intellectual Property(知的財産)の略語。マンガやアニメやゲームの版権(著作権)を指す。
-最後に、京都への進出を検討されている企業にアドバイスをお願いします。
中山さん
私たちも進出してまだ日が浅いですが、京都のまちを知れば知るほど、面白いことやできることが増えてくる感覚があります。ですから、「利益が出たからOK!」みたいな感じですぐに見返りを求めようとせず、長期で考えたほうが恩恵も受けられるし、楽しめる部分も増えてくるだろうと思います。
笹淵さん
今は何でもネットの時代ですが、京都の場合、ネットに載っていない情報が圧倒的に多い気がします。地元の人だけが知っている情報があって、私たちも来てからわかったことが結構あったので、真剣に進出を検討されているのであれば、1カ月ぐらい滞在してみることをおすすめします。進出企業のコミュニティに入って話を聞くと役立ちますよ。京都市の職員の方も積極的にサポートしてくださるので、遠慮せずにどんどんアプローチしたら、具体的なイメージが湧いてくると思います。