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live in Kyoto…

  • REPORT

2023.01.12

トークイベント「『Kyo-working|京ワーキング』 〜 スタートアップの採用戦略としての京都進出 〜」開催レポート

世界に名だたる企業やオンリーワン企業を数多く輩出してきた京都。歴史と文化に彩られた京都ブランド、多様な大学の存在、コンパクトシティ、起業支援など、ビジネス都市としても注目度が高い。そんな京都の魅力を伝える、「京都で暮らし、京都から働く」新しいワークライフスタイル「Kyo-working(京ワーキング)」を紹介する連続イベントの第2回目が2022年11月17日に開催された。スタートアップが新卒・インターン生など、多様な人材採用を行う上で京都市に拠点を置くメリットや、京都で暮らし・働くことの魅力について語られたイベントの様子をレポートする。

イベントの様子

外国人や学生のリクルーティングをしやすい京都

国内外から文化・観光都市として高い評価を受けてきた京都市は、ここ数年で成長企業が集まるビジネス都市としても進化している。

その理由は大きく2つあり、一つは職住近接のコンパクトシティで、オフィス街の中心部から4キロ圏内に市街地のほぼ全域がカバーされていること。もう一つが日本随一の学生都市であることだ。学生の密度は東京の2倍あり、京大、同志社、立命館などの学生との接点を持ちやすい。

実際、東京から進出する企業は年々増えており、
・新卒採用は期待以上。優秀な学生が多くオファー率も高い
・機械学習の仕事をインターンに担当してもらっていて、戦力として期待できる
・理系学生中心に数十人が常時インターンをしている
・大々的な募集はしておらず会社のHPに載せるだけで多数応募が来る
など、インターンや新卒採用に手応えを感じている企業が多いと、京都市企業連携営業アドバイザーの新色氏は語る。

京都芸術大学教授の小笠原氏は、「スタートアップは、外国人や京大生などかなり面白い採用ができると思います。」と語る。

一方で学生は
・キャリア系インターンはどこにアクセスすべきかわからない
・就活情報が東京に比べて少ない。スタートアップが京都にあるなら応募したい
といった課題を感じている。

学生とスタートアップを接続している鈴田氏によると、スタートアップに興味を持つ学生は増えているもののスタートアップに触れる機会が圧倒的に少ないため、接点を与えるだけで京大生を中心に食らいつく学生が多いという。

左から鈴田氏、泉氏

ゼロイチができる京大生を中心に、優秀人材が豊富

学生との接点さえ上手くコーディネートできれば、インターンや新卒を採用しやすい京都。2018年に営業・開発・採用の3つを目的に京都進出をしたネットプロテクションズの秋山氏も、学生が多い京都はインターンや新卒を採用しやすいと語る。

「京都は新卒2年目のメンバーが東京から京都にUターンするために立ち上げた拠点です。そのメンバーが京都の責任者をしていることもあり、インターンが活躍しやすくそのまま入社してくれる学生もいますね。」(秋山氏)

秋山氏

藤原氏が代表を務めるHACARUSも、従業員65名のうち半分が学生アルバイトで、4分の1が外国人だと言う。外国人に関しては、京都に住み、働くきっかけが欲しかったという声が多く、京都の街の魅力が採用力に直結しているそうだ。

また生活費の違いも京都に進出するメリットになると小笠原氏は言う。

「東京はスタートアップでも年収はそれなりに必要ですが、京都なら500万円あれば十分豊かな生活ができます。つまり、京都ならスタートアップの創業メンバーを増やせるんです。スタートアップにとって一人の存在価値はとても大きいので、優秀な人を一人でも多く仲間にできるのはメリットだと思います。」(小笠原氏)

では具体的に、京都に拠点を持つとどのような人材を採用できるのか。

「京都でAIなどを開発している会社は片手で数えるしかないので、データサイエンスや機械学習に携わりたい学生は集まります。そもそもIT企業が少ないので、京都に拠点を構えるだけで自動的にアルバイトやインターンが集まりますし、京大はゼロイチができる学生が多いので、スタートアップにはもってこいの場所だと思います。」(藤原氏)

秋山氏も、京都は常識にとらわれず“次の当たり前になるのは何か”を自分で考えて自律的に動きたいメンバーが集まっていると語る。たくさんの人がいる東京に飲み込まれるよりも、京都で自由にチャレンジしたい人が増えているのかもしれない。

藤原氏

長期インターンからスタートアップへの就職に興味

最先端テクノロジーの知識や技術を持つ学生や、デザイン思考を持つ学生を求める企業からすれば、京都は宝の山といえる。だからこそ、小笠原氏は現在の新卒採用のあり方を京都から変えたいと語る。

「デザイン思考が求められていることもあって、デザイン系を中心に芸大の卒業生も7〜8割が就職していますが、学部生の間に就職活動をすべきではないと思うんですね。4年間しっかりと学んだ後、長期インターンをして採用されるほうが企業にとっても学生にとってもいいはず。企業数の多い東京でそれを始めるのは難しいと思いますが、京都の経済規模ならできると思っています。」(小笠原氏)

鈴田氏は長期インターンからスタートアップに就職することに興味を持っている学生は一定数いるという。また、秋山氏もそういった学生はアントレプレナーシップを持っているケースが多く、入社後に新規事業を立ち上げる、新しい拠点を作るといった次の一歩を踏み出す勇気を兼ね備えているそうだ。

「アントレプレナーシップを持っているからこそ、ブレーキの踏み方、つまり会社のクローズの仕方を教える場所も必要だと思っています。京都でスタートアップの創業支援だけでなく、状況に応じてクローズさせるところまで伴走できれば、自然と他のスタートアップに転職する、再び起業するといったサイクルにつながるのではないかと思います。」(小笠原氏)

小笠原氏

京都のブランド力を生かした採用戦略を

優秀な学生が多く、外国人からも人気を集める京都。採用戦略としてスタートアップが京都に進出する際は、京都なりの工夫も必要だと小笠原氏は言う。

「たとえば京都に住むことをインセンティブとして提供すれば、外国人や学生は集まりやすいと思います。学生も住む場所があれば京都から出ていく必要がないですからね。住む場所を軸にできるのは、文化・観光都市である京都ならではだと思います。」(小笠原氏)

たしかに、京都のブランド力を生かした採用戦略は、スタートアップの成長のカギになる。外国人や学生を巻き込んでチャレンジするだけでなく、眠っていた転職潜在層を掘り起こすことにもつながる可能性があるだろう。

また藤原氏は、京都に進出して本社と同じことをやっているとコミュニケーションコストが上がるだけだと危惧する。「京都に進出する際は、本社の延長ではなく本社とは関係ない新規事業やR&Dなどの独立拠点にすると、良い結果を得られると思います。」(藤原氏)

最後に小笠原氏は、京都で起業したい人向けに京都芸術大学が作った投資ファンドの存在を紹介してくれた。「相談窓口は『awabar kyoto』にあるので、起業を検討している人はぜひお越しください。投資だけでなく、拠点として大学を貸すことも、デザイナーなどの人の紹介もできますよ。」(小笠原氏)

国内外に評価されるブランド力があり、人手不足の時代においても優秀な学生や外国人を採用しやすい京都は、国内でも稀有な場所と言えるだろう。豊富なリソースを活用し、成長したいスタートアップや起業家は、ぜひ京都進出を検討してほしい。

左から泉氏(モデレーター)、鈴田氏、小笠原氏、藤原氏、秋山氏、新色氏

プロフィール

小笠原 治(京都芸術大学 教授 株式会社ABBALab 代表取締役 さくらインターネット株式会社 フェロー)
さくらインターネット株式会社の共同ファウンダーを経て、ネット系事業会社の代表を歴任。 2013年、ABBALabとしてシード期のスタートアップへの投資事業を開始。2015年、さくらインターネットにフェローとして復帰。 2017年、京都芸術大学教授・クロステックデザインコース長に就任。福岡市スタートアップ・サポーターズ理事等。

藤原 健真(株式会社HACARUS 代表取締役CEO)
滋賀県の田舎町から18歳で単身アメリカに留学。帰国後、ソニー・コンピュータエンタテインメントでエンジニアとしてPlayStationの開発に従事した後、数社のテクノロジーベンチャー企業を共同創業。2010年から活動拠点を京都に移し、京都が持つ大学の技術と知財、ライフサイエンス・モノつくりの経験と知見、優秀な日本人学生と留学生、よその真似をしない独自のビジネス価値観、といった強みを再発見する。

秋山 瞬(ネットプロテクションズ株式会社 執行役員)
慶應義塾大学卒業後、設立2年目の人材系スタートアップ企業に新卒1期生として入社。 新規事業責任者や関西支社長を経験した後、2009年に株式会社ネットプロテクションズに参画。 セールスマネージャーを経て、2017年に執行役員に就任し、企業アライアンスを行うビジネスディベロップメントグループを立上げ。 2021年には、JCB社との大型資本業務提携を推進。事業・組織双方でミッションである「つぎのアタリマエ」づくりを目指す。

鈴田泰久(yasu株式会社 CEO)
関西のスタートアップエコシステムの醸成のため、関西圏のスタートアップをソーシング〜シードVCにつなげる活動を行う。関西U29アクセラレータープログラムRe:Vive企画運営。 (一社)京都知恵産業創造の森 スタートアップ推進部と協力し、毎月VC壁打ちや講義などを企画運営。

新色 顕一郎(京都市企業連携営業アドバイザー)
FinTechスタートアップ 取締役COO。都市銀行にて中小・大企業向け融資営業、営業企画業務等に従事し、その後London Business SchoolにMBA留学。卒業後は戦略コンサルティングファームに参画し、製造業を中心に戦略プロジェクトに携わる。現在はFinTechスタートアップにて事業責任者及びファイナンス・経営企画業務等を担当。

泉友詞(フォースタートアップス株式会社/モデレーター)
大学時代は心理学/運動生理学専攻にて「ココロ」と「カラダ」を研究。前職GMOインターネットグループ企業にてマーケティング事業開発領域組織を牽引。その後、創業期のフォースタートアップス株式会社に参画。シニアヒューマンキャピタリストとして活動し、ユニコーン級スタートアップの組織組閣支援及び経営人材支援を実施。現在は、新産業創出産業支援のための産学官金連携を推進するべくPublic affairs戦略室を創設、中央・地方政府/大学/大企業/ベンチャーキャピタルと共に更なる日本の競争力強化に取り組んでいる。

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